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ヤゴ・ピカチュウと乾貴士。清水の新たな両翼が担う役割をゼ・リカルド戦術から探る

2022.10.06

シーズン途中に就任したゼ・リカルド監督の下、16位から一時は11位にまで順位を上げ、J1第31節時点で14位に位置している清水エスパルス。1試合消化が少ないものの降格圏と勝ち点1差で佳境を迎える中、残留のキーマンとして挙げられるのは、今夏の加入から絶対的なレギュラーに定着しているヤゴ・ピカチュウと乾貴士だ。清水の新たな両翼が担う役割を、同クラブを追い続ける戦術ブロガーの猫煮小判氏に解説してもらった。

 8月7日、味の素スタジアムでのJ1第24節。降格圏脱出を目指す清水が獲得した夏の新戦力、乾貴士とヤゴ・ピカチュウの両選手が同じピッチに立った。前節のサガン鳥栖戦で新天地デビューを果たした2人だが、スタメンのピカチュウと入れ替わりで乾が途中出場していたので、同時出場はこのFC東京戦が初めてとなる。

 ゼ・リカルド監督就任以降、清水のオフェンスは“中盤の空洞化”が最大の特徴となっている。基本フォーメーションこそ[4-4-2]だが、ポゼッションではボランチ1枚と両サイドハーフ(以下、SH)を加えた前線が5トップ化して厚みを加え、カウンターではカルリーニョス・ジュニオとチアゴ・サンタナという2トップの質を最大限活用した縦志向の速攻を繰り出す。上手くいけば圧倒的に押し込めるが相性が悪いと相手の波に呑まれやすい、アントニオ・コンテが得意とするようなサッカーと言った方がイメージできるかもしれない。このサッカー、戦術上で肝をなすのが両SHになる。

“とにかく気が利く”ピカチュウ

 実際にゼ・リカルド体制で立て続けに獲得されたのは、SHだった。もともとこのポジションは駒数が十分ではなく、ケガ人の多発でさらなる不足に陥っていた清水。そこでまず白羽の矢が立ったのは、ゼ・リカルド監督がバスコ・ダ・ガマ時代に共闘したヤゴ・ピカチュウだった。

 その名前にインパクトを覚えるが、現在のプレースタイルは同名のポケモンのようにすばしっこいわけではない。むしろ本人が「本職はサイドバック(以下、SB)」と語るように、得意なのはサポート役として黒子に徹する役柄。前所属のフォルタレーザで94試合で29ゴールを挙げたように得点力も非凡だが、自身よりもチームに身を捧げる“気の利く”アタッカーだ。

フォルタレーザ退団会見で「自分はSBの選手だと思っている。攻撃的なSB、敵陣ゴール前に侵入するSBだ。 中盤でプレーしたこともあるけど、SBだと自覚しているよ」と話したピカチュウ(15:50~)

 ピカチュウはキャリアの大半をSBやウイングバックとしてプレーしていながら、SHやウイングで起用されたのは、バスコ時代を含むゼ・リカルドの下でプレーしている時だけ。そのピカチュウ個人のプレーで一番目を惹いたのは守備だ。SB出身者らしく粘り強く相手についていき、身振り手振りを交えた周囲へのコーチングも適格。自身が寄せた時は後方のチームメイトへのカバーリングの指示も欠かさない。また縦のコンビを組むSBに原輝綺か片山瑛一というそれぞれ異なるタイプが入っても、パートナーを選ばない適応力がある。

 ただ、あまりにも万能であるがゆえ、個性的なアタッカーというわけではないのでプレーから紹介できる場面は少ない。“とにかく気が利く”。ピカチュウという選手を表現するならばこれ以上の言葉はない。

山原ブレイクの影にある乾の存在

 一方で逆サイドの乾は個性派だ。プレースタイルについては、今さら説明しなくてもわかるはず。現在は34歳を迎え瞬間的な加速力こそなくとも、その技術と緩急を利用したドリブルで確実に相手1枚は剥がせるテクニシャンだ。一番印象に変化があったのは守備で、日本代表の一員として出場したロシアW杯時から素晴らしいプレスバックやカバーシャドウを見せてくれたが、ラ・リーガで身に着けた守備力は、味方になるとこれ以上の頼もしさはない。……

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J2リーグヤゴ・ピカチュウ乾貴士戦術清水エスパルス

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猫煮小判

静岡県静岡市…いや、静岡県清水市に生まれ育った自称次郎長イズムの正統後継者。好きな食べ物はもつカレー、好きな漫画はちびまる子ちゃん、尊敬している人は春風亭昇太師匠。そして、1番好きなサッカーチームは清水エスパルス!という、富士山は静岡の物でもの山梨の物でもない日本の物協会会長の猫煮小判です。君が清水エスパルスを見ている時、清水エスパルスも君を見ているのだ。

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