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6年ぶりのJ1復帰が近付くアルビレックス新潟。終盤戦のキーマンは堀米悠斗と藤原奏哉の両SBだ!

2022.09.09

2017年に降格を味わって以来、5シーズン目のJ2リーグを戦っているアルビレックス新潟。中盤戦以降、常に自動昇格圏内の2位以内をキープしてきたチームは、いよいよ目標を手繰り寄せるための終盤戦へと足を踏み入れている。多くの選手が躍動してきた中で、とりわけ欠かせないのは両SB。左の堀米悠斗、右の藤原奏哉は、シーズンを通じて攻守に効果的なプレーを披露し続けてきた。そんな彼らはどんな想いを抱えて、新潟の地で戦っているのか。クラブに寄り添う野本桂子が、2人の実像に迫る。

チームを支える両SBの圧倒的な存在感

 J1昇格を目指す5度目のシーズン。アルビレックス新潟は、明治安田生命J2リーグ第34節を終えて、19勝8分7敗。首位・横浜FCとは勝ち点2差で2位につけている。

 松橋力蔵新監督とともに2022シーズンをスタートした新潟は、開幕から4試合勝ちなしの時期を乗り越えると、その後は一度も連敗することなく勝ち点を積み上げてきた。第17節以降は、自動昇格圏内をキープしている。

 「全員が戦力」という指揮官の下、現在所属する選手29名のうち、GK3名を除くフィールドプレーヤー全員が出場。出場した選手は、シーズン当初登録の31名中27名。誰が出ても、それぞれが持ち味を生かして活躍し、それが健全な競争意識を生み出し、切磋琢磨する中でチーム力を高めてきた。

 開幕から34試合3060分、フル出場しているのはGK小島亨介。失点数をリーグ最少の31に抑えている。

 フィールドプレーヤーで多く起用されているのは、両SBの堀米悠斗と藤原奏哉。堀米は第34節を終えて、チーム2位の33試合2886分に出場。藤原は同3位の33試合2630分に出場している。

 左の堀米と、右の藤原。ともに小柄ながら対人に強く、周囲と関わりながらの攻撃参加を得意とするSBであり、どんなに苦しい状況でも諦めずに戦い抜く気持ちの強さと、それをプレーで見せるタフさを併せ持つ。

トレーニングでボールを運ぶ堀米(Photo: Keiko Nomoto)

チームの勝敗に“結果”で貢献するSBのクオリティ

 それを象徴するゲームとなったのが、第30節・ホームの徳島ヴォルティス戦だ。0-2で迎えた78分からの7分間で、SBの2人がゴールを畳みかけて同点に追いつき、貴重な勝ち点1をもぎ取った。

 チームが停滞していた時期だ。第28節・ホームのファジアーノ岡山戦は2-3で敗れ、続く第29節・アウェイのV・ファーレン長崎戦は2-2で引き分け。2試合とも相手に先制され、一度は逆転に持ち込むものの、追いつかれて勝ちきれなかった。

 それを受けてのホーム徳島戦。3試合連続で相手に先制点を与えると、後半にも失点して0-2に。今季ここまで2点リードされた2試合は2敗しており、ホームでは2連敗中。不安がよぎる状況で、指揮官は両サイドハーフと両ボランチを交代し、相手の背後を狙う動きを増やす。この采配が奏功し、SBの2人が意地を見せた。

 78分、高木善朗のFKから、ヘディングでまず1点を返したのは、右の藤原。

 「2失点目は、自分が競り負けて決められていたので、取り返したい気持ちがあった。1点取れば状況が変わると思っていたので、その1点を取れたことはよかった」(藤原)。

 1つ前のアウェイ長崎戦でも点を決めていた藤原の2試合連続ゴールに、1万5000人以上の拍手の轟音が鳴り響く。ホームのムードが一変した。

 その7分後。追加点は、左の堀米が決める。

 「1点目のゴールで勇気をもらった。チームとしても『いけるぞ』っていう感じになったし、何より、重苦しいスタジアムの空気を変えてくれた」。

 85分、藤原を軸としたパスワークで右サイドに相手を引きつけ、途中出場の秋山裕紀がゴール前へ浮き球を送ると、飛び込んできた堀米がヘディングでゴール。

 「2失点目は、僕のサイドからのクロスでやられていたので、取り返したい気持ちはあった」

 今季初得点は、藤原と同様、自身の借りを返すゴールでもあった。

J2第30節、徳島戦のハイライト動画

 そして迎えた、第31節・アウェイの栃木SC戦。鈴木孝司の先制点に続き、藤原が勝利を決定づける2点目を決めた。藤原は、これで3試合連続ゴール。課題だった複数失点も克服し、クリーンシートで勝利を収めた。

 3試合勝ちなしを脱出したチームは、そこから3試合連続で完封勝利を続けていった。

 彼らの得点を受け、松橋力蔵監督は「僕はどのポジションの選手にも、『攻撃の時には、点を取るためのプレーをしよう』と。GKにも、アシストをするくらい、ゴールを意識したプレーをしようと言っています。SBはより攻撃的なポジションなので、これまでの活躍は非常に評価できます。チャンスとなればそこを逃がさないことは非常に大事なので、そこは引き続き、出してほしい」と攻撃面での期待を寄せている。

 つなぐことに固執せず、浮き球でブロックを越える形が見えたことも、チームとして収穫となった。

左SB、堀米悠斗。パートナーを生かす柔軟性

 左サイドバックの堀米悠斗は、北海道生まれの27歳。北海道コンサドーレ札幌のアカデミーで育ち、13年にトップチームへ昇格。16年に札幌のJ1昇格に貢献した後、17年に新潟へ完全移籍加入した。しかしこの年、新潟はJ2降格が決定。その後、ケガなどもあり、スタメンに定着できないシーズンが続いた。

 それでも「しっかり1シーズン通して活躍し、J1に上げないと、選手として格好がつかない。移籍金を出して自分を買ってくれたクラブに恩返しもできていない」と新潟で6年目を迎え、主将を務めるのも3年目となった。21年は移籍後最多の41試合に出場し、1シーズン通して活躍するという目標は1つ達成。今季も2試合を除き、先発で出場を続けている。

 味方の持ち味を生かすポジショニング、サポートが得意で、19年からは主に左サイドで本間至恩(現・クラブ・ブルージュ)と縦関係を組み、その活躍と成長を後押ししてきた。

パス練習を行う掘米(Photo: Keiko Nomoto)

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アルビレックス新潟堀米悠斗渡邊泰基藤原奏哉長谷川巧

Profile

野本 桂子

新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。

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