セリエA序盤戦の大一番、9月3日に行われたミランとインテルの今季ダービー第1ラウンドは、21分に先制を許したものの、28分(レオン)、54分(ジルー)、60分(レオン)の3ゴールで逆転したミランに軍配が上がった。これで開幕5戦無敗の昨季王者(3勝2分)に対し、第3節ラツィオ戦に続く黒星を喫した一昨季王者(3勝2敗)。勝敗の分かれ目、両軍の間に今ある差を、白面(@Hakumen9b)さんが考察する。
明確に在り方が離れたミラノの2クラブ
第177回目のミラノダービー。この試合は勝ち点の奪い合いというだけでなく、両クラブが歩んできた道程の正当性を競い合うという、特別な意味合いを持つ一戦となった。
周知の通り、両クラブは過去10年近くにわたり、長い低迷期に苦しんできた。互いに2度のオーナー交代も経験しながら(正確にはミランはこの試合の直前、レッドバードへの売却が完了したため、3度の交代となる)、直近の2、3シーズンで、ようやくCL圏やスクデット争いに戻ってきた状況にある。
だが、両クラブが選択したアプローチは、実に対照的だった。
インテルは従来のカルチョにおいて正統派とされる、保守的な成長戦略を選んだ。一定以上の経験を積んだ強力な選手や、身体的な衰えを豊富な経験でカバーするベテラン選手を多く獲得する、イタリアでは長年、王道とされた強化戦略である。今夏に獲得したビッグネームが、2シーズンぶりの復帰となる29歳のロメル・ルカクに、過去2シーズンにわたりローマの中心選手として活躍してきた33歳のヘンリク・ムヒタリアンというのは、なんとも象徴的だろう。一方で正GK候補としてアヤックスからやって来たアンドレ・オナナ(26歳)や、将来性を見込んでエンポリから獲得したMFクリスティアン・アスラニ(20歳)らに、この試合を通して出番が回ってくることはなかった。こうした事象は指揮官であるシモーネ・インザーギの趣向だけでなく、インテルというクラブそのものが有するイデオロギーの影響を、色濃く感じさせるものである。
片やミランは、カルチョにとどまらず欧州全体を見渡しても、過去数シーズンで最もドラスティックな改革を成し遂げたクラブの1つである。獲得する選手のほとんどは、スカウト陣が各国のエージェントと連携して探し出した選りすぐりの有望若手ばかり。一方で、船頭なく航路が不安定になりそうと見るや、ズラタン・イブラヒモビッチやシモン・ケアーら、ベテランを要所の楔(くさび)に用いる柔軟性も併せ持つ。特徴的なのは、獲得資金にもサラリーにも明確なキャップを設け、厳格な財政規律のもとでクラブ運営を行っている点だ。このルールから逸脱したジャンルイジ・ドンナルンマ(現パリ・サンジェルマン)やフランク・ケシエ(現バルセロナ)は、在籍当時の絶対的な主力選手だったにもかかわらず、契約延長交渉を打ち切っての放出に踏み切った。知っての通り現インテルのハカン・チャルハノールも、一昨季までミランに所属していたが、契約延長交渉が折り合わずに放出された一人である。
それぞれまったく異なる道程ながら、両者は再び、そろって優勝候補に挙げられる高みにまで上り詰めた。一昨季はインテルが、昨季はミランが、スクデットを獲得。しかも、それぞれのシーズンで両クラブは2位につけている。
チームマネジメントを超えた、クラブマネジメントの是非を問う、答え合わせとも言うべき試合。それが今回のダービーなのである。
ピッチ上にも色濃く浮き出た戦略の違い
そんな背景がある試合なもので、スタメン表を見た際は、いかにも納得の顔ぶれ……と感じたものだ。……
Profile
白面
集団心理とか、意思決定のノウハウ研究とかしています。昔はコミケで「長友志」とか出してました。インテルの長所も短所も愛でて13年、今のノルマは家探しです。