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近未来のフットボールの鍵? データ分析で見る「両利き」の性質

2022.10.15

TACTICAL FRONTIER

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか? すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。

※『フットボリスタ第92』より掲載

 「両利き」という言葉はフットボールファンにとって甘美な響きであり、これまでも多くの天才的な選手は両足から精度の高いボールを供給し、スタジアムのサポーターを熱狂させてきた。

 記憶に新しいのはアーセナルで活躍したスペインの「小さな天才」サンティ・カソルラだろう。ボールを止めて、それを正確に味方に預けるという基礎的なプレーのスペシャリストはスペイン代表でも活躍し、現在はカタールのアル・サッドでプレーしている。同じく名手としてバルセロナやスペイン代表の中盤を支え、華麗なパスワークの心臓となったシャビ(現バルセロナ監督)がアル・サッドの監督時代に獲得を熱望した男は、引退の危機から復活した不屈のメンタルでも知られている。彼の美しいプレーを支えた最大の技術的な特徴は、限りなく両利きに近いことだった。どちらの足でもCKを蹴るという芸当は、その特異な能力を象徴している。

アル・サッドでのカソルラ。2022-23は公式戦10試合で4ゴールをマークしており、12月で38歳を迎えるとは思えないパフォーマンスを披露している

 日本では冨安健洋が両足を自在に使える選手として知られており、アーセナルでも両SBのポジションで起用されている。CBとしても両足を使えることはビルドアップの幅を広げ、そのキックはヨーロッパのトップレベルに匹敵するまでに成長した。

指揮官からの求めに応じ、どちらのサイドで出場しても高パフォーマンスを見せている冨安

 同じくアジアからプレミアリーグに挑戦し、その実力を示しているのが名実ともに「アジアNo.1アタッカー」の座に君臨するソン・フンミン。トッテナムに所属する韓国代表アタッカーは少年時代に父親の指導で「両利きのアタッカー」として完成した。父親の特徴的な指導法は自らが運営するアカデミーにも引き継がれ、「15歳になるまでシュート練習を禁止する」という興味深いアプローチを取っている。ソンの父親は「15歳までの年代ではシュート練習によるケガのリスクが大きく、15歳になってから両利きの選手を育てることに特化したメニューでシュート技術を習得させるべきだ」と説明している。ソンも15歳になってからは両足で毎日500本ずつのシュート練習を続け、トップスピードでドリブルしながら正確なシュートを放てる選手へと変貌した。父親はそれを「トップレベルの選手にとっては当然の能力だ」と述べている。

「右利き」「ウイング」が共通点

 前置きが長くなってしまったが、現代フットボールにおいて「両利き」であることはトップレベルで成功する鍵になっているのだろうか?

 今回はフランスの『フィガロ』紙に寄稿するジャーナリストのニコラ・モンドン氏のデータ分析記事を中心に、どのようにトップレベルのアタッカーが「両足」を使いこなしているかを考えていこう。……

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サンティ・カソルラソン・フンミン冨安健洋

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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