開幕から公式戦5試合で21得点と、圧巻のゴールラッシュを続け好発進を切ったバイエルン。2季目を迎えるにあたり、ナーゲルスマンはいかに昨季を振り返り今季に臨んでいるのか。著書『ナーゲルスマン流52の原則』が好評発売中の木崎伸也さんが、ナーゲルスマンバイエルンの序盤戦から分析する。
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次のひと言が、今季のバイエルンを象徴しているだろう。
ブンデスリーガ第4節ボルシアMG戦前、ユリアン・ナーゲルスマンは『スカイ』のインタビューで誇らしげに言った。
「選手に成長を求めるなら、監督も成長しなければならない。今季、私はそれを実行したんだよ」
ナーゲルスマンにとってバイエルン1年目となった2021-22は、不本意なシーズンだった。ブンデスリーガこそ10連覇を達成したが、DFBポカールは2回戦で敗退し、CLでは準々決勝で伏兵ビジャレアルに足をすくわれてしまった。
チーム内から戦術への不満が漏れたことも重なり、ナーゲルスマンは大きな批判にさらされた。
だが、若き戦術家は失敗を無駄にしなかった。
戦術を「シンプル」に
シーズン終了後、ナーゲルスマンは選手、スタッフ、代理人にヒアリングを行い、自分に何が足りなかったかを分析。バカンス中もヨシュア・キミッヒら中心選手に電話をかけて意見を求めた。
導かれた結論は、「いくつかの点で、自分のやり方を変えるべき」。ブンデス開幕直前、ナーゲルスマンは『フランクフルター・アルゲマイネ』紙のインタビューで方針修正を明かした。
「監督として今ここにいるのは、確かな哲学の下で複雑なトレーニングを行い、時に挑戦的なメニューを行い、対戦相手の準備をしてきたからだ。
ところが、バイエルンの選手たちはそれに慣れていなかった。ビッグクラブは敵にあまり目を向けない傾向があるんだ。
今季はいくつかの点で、自分のやり方を変える。対戦相手の準備は短くし、より自分たちに目を向ける。昨季の後半は、自分たちのやり方を信じる力が弱まっていた。
バイエルンでの1年目で、各選手のキャラクターをチームに取り込むことの大切さを学んだ。戦術を伝えるよりも大事なことがある」……
Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。