サッカー界のチーム名の由来はいろいろある。英国では大半のクラブが「地名」をベースにしているが、世の中にはもっと“神秘的”な名前を持つクラブがあるそうだ。英紙『The Guardian』のウェブサイトが特集記事を組んでいるので紹介しよう。
英雄の名を冠するオランダの強豪
最も神秘的なチーム名と言えば、神話に出てくる神や英雄の名前が付いたクラブだろう。そんな神秘的なクラブで最も世界的に有名なのが、オランダの「アヤックス(Ajax)」だ。チーム名の由来は、ギリシャ神話に登場する「大アイアース(Ajax the Great)」だという。
大アイアースというのはギリシャ神話の英雄で、トロイア戦争では大英雄「アキレウス」の次に強さを誇ったことで知られる。その名前を受け継いだアヤックスも、オランダ国内での最多優勝や4度の欧州制覇など輝かしい実績を誇る。クラブのエンブレムに描かれている顔も、兜をかぶった大アイアースだという。
オランダにはこの他にもギリシャ神話をチーム名の由来とするクラブがある。元日本代表の平山相太が所属したことでも知られる「ヘラクレス・アルメロ」もその1つだ。当然、チーム名はギリシャ神話に登場する最大の英雄で、全知全能の主神であるゼウスを父に持つ「ヘーラクレース」から来ている。しかし、エールディビジでの優勝は2回だけで、現在はオランダ2部リーグに所属しているため、少し名前負けしているようにも感じる。
サッカー界ではギリシャ神話の英雄「ヘーラクレース」は人気があるようで、スペインの「エルクレスCF」はローマ神話バージョンの「ヘーラクレース」から名前をもらったとされている。エルクレスも近年は苦戦を強いられており、最後にトップリーグに在籍したのは2010-11シーズン。現在は4部リーグで奮闘している。
ギリシャには神話由来のクラブが多数
イタリアにもギリシャ神話から名前を拝借したクラブがある。それが「アタランタ」こと、アタランタ・ベルガマスカ・カルチョである。アタランタという名前は、ギリシャ神話に出てくる女狩人の英雄「アタランテー」から取ったもの。クラブのエンブレムを見ると、ちゃんと神話に登場するアタランテーの顔があしらわれている。
当たり前だが、ギリシャには神話から名前を拝借したクラブが複数ある。例えば「イラクリス・テッサロニキ」(現在ギリシャ2部)は、既に何度も登場している「ヘーラクレース」の名前を付けたクラブ。イラクリスというのはヘーラクレースのギリシャ語表記だ。
同じ町を拠点とする「アリス・テッサロニキ」も、ゼウスの息子でギリシャ神話に登場する戦を司る神「アレース」がチーム名の由来だそうだ。エンブレムにはしっかりと「アレース」があしらわれている。
ギリシャの「アポロン・スミルニ」(現在ギリシャ2部)はギリシャ神話に登場するオリュンポス十二神の「アポローン」がクラブ名の由来だ。ちなみにキプロスの「アポロン・リマソール」も同じくゼウスの息子である「アポローン」から名前をもらっているという。
このように、世の中には“神秘的”な名前を持つクラブがいくつも存在するが、中には若干だが“名前負け”しているチームもあるようだ。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。