今夏のセリエAの移籍市場で、若手選手の流出が続いている。
8月3日、エンポリはDFマッティア・ビーティがリーグ1のニースに移籍したと発表した。U-21イタリア代表にも名を連ねる20歳で、昨季はトップチームでも20試合に出場している。その彼の獲得に向けてニースは1300万ユーロの移籍金を積み、エンポリには成功ボーナスや将来の移籍報奨金などが約束されているという。
以前ミランも興味を示していたと言われる若手の長身CBの流失に、ファンはネットで「セリエAの強豪が彼に手を出さなかったことが嘆かわしい」という反応を示した。
下部組織所属選手にも海外クラブが食指
他にもU-21イタリア代表クラスが海外のクラブに引き抜かれるケースが目立っている。A代表の次期主力と期待されているFWジャンルカ・スカマッカは、サッスオーロが要求した高額の移籍金に各クラブが二の足を踏んでいる間、イングランド・プレミアリーグのウェストハムが3600万ユーロと将来の成功ボーナスを提示して獲得に成功。
セリエBピサのエースとして急成長していたFWロレンツォ・ルッカには、エールディビジのアヤックスが獲得に乗り出し、ボローニャとの競合に勝ってオランダへと引っ張った。
人材流出の恐れはその下の年代にも波及している。イタリアの各地元メディアは、チェルシーがインテルの下部組織に所属する19歳のチェーザレ・カサデイの獲得に向けてプッシュを掛けていると報じた。昨季は飛び級でプリマベーラに所属し、中盤の主軸としてプリマベーラ全国選手権の優勝に貢献した。
チェルシーはカザデイ獲得のために、インテルに対して推定800万ユーロの移籍金を提示。ジュセッペ・マロッタCEOが跳ね除けた後もオファーを増額し、インテル側が希望する2000万ユーロに近づけてでも獲得を狙う意思を示しているという。
「赤字削減の必要に直面しているインテルが『ノー』と言うのは難しくなる恐れがある」と複数の地元メディアは論じている。
イタリア人の若手選手が海外に流出する傾向について、イタリア代表のロベルト・マンチーニ監督は『イル・ジョルナーレ』紙のインタビューの中で「これで彼らが試合に出られるなら良いこと」と歓迎する意志を示した。
そして「以前イタリア人は皆この国に残った。今は他の国に比べれば、(自国リーグを出ていく選手の数は)それでもまだまだ少ない」と他国に倣ってセリエA以外のトップリーグに挑戦する傾向を容認する発言をしている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。