ファクンド・ペリストリ(ウルグアイ):「とにかく恥知らずなプレーをする」リケルメ&フォルラン絶賛の“真珠”【W杯注目の新星⑥】
7月11日に発売され、現在プレゼントキャンペーンも実施中の『footballista 2022 QATAR WORLD CUP GUIDEBOOK』。出場32カ国確定のタイミングでどこよりも早く、全チームの有力メンバーを網羅した選手名鑑と戦術分析をお届けするカタールW杯観戦ガイドだ。その連動企画として、WEBでは各国の担当ライターがそれぞれ、本大会でブレイク期待の“ライジングスター”を紹介。第6回は次々と逸材が現れる「ウルグアイ代表」より、18歳でマンチェスター・ユナイテッド入りを果たし、今年1月のA代表デビューから6試合3アシストと躍動する現在20歳のウインガー、ペリストリを取り上げる。
ウルグアイ代表チームの若手スターは誰かと聞かれたら、多くのサッカーファンがフェデリコ・バルベルデ(24歳/レアル・マドリー)やロナルド・アラウホ(23歳/バルセロナ)といった名前を挙げるだろう。
サッカーというスポーツが全世界に伝播した20世紀初頭から名手を輩出し続けたウルグアイ。人口350万人足らずの国でありながら、欧州5大リーグで目下23人もの選手がプレーするこの「小さなサッカー大国」からは、バルベルデやアラウホよりもさらに若い世代のスター候補が次々と生まれている。現在マンチェスター・ユナイテッドに所属するウインガー、ファクンド・ペリストリはその代表格だ。
今年1月、ウルグアイがW杯予選で危機的状況に陥っていた最中にA代表でデビュー。レンタル移籍した所属先のアラベス(スペイン)では出場機会が与えられずに不遇の時期を過ごしていたにもかかわらず、「チームに必要なキープレーヤー」と判断したディエゴ・アロンソ監督によって代表に初招集され、累積警告で不参加となった最終節チリ戦を除く3試合すべてにおいて先発出場。指揮官の厚い信頼に応えるかのように、リオネル・メッシを彷彿とさせる突破力と正確なクロスから得点に絡むプレーも披露し、予選通過に貢献して一躍脚光を浴びる存在となった。
名門ペニャロールの下部組織でも突出した才能
身長174cm、体重65kgという小柄な体を生かし、軽快な身のこなしから素早い突破を得意とするペリストリは2001年12月20日生まれの20歳。幼い頃から足が速く、首都モンテビデオ市内のセント・ブレンダン小学校に通っていた頃は短距離走のエースとして活躍し、200mリレーでは同学年の仲間たちと一緒に無敵と呼ばれるチームを結成して様々な大会でメダルを勝ち取ったそうだ。
学校で陸上競技の練習に汗を流す一方、4歳から所属していたサッカーチーム「ラ・ピカーダ」のメンバーとしてジュニアリーグに出場する日々を送っていた。同じ市内のアイビー・トーマス校に転校した後も陸上とサッカーのトレーニングを両立し続け、同校の体育教師は当時の様子を次のように語っている。
「短距離走では誰もファクンド(ペリストリ)と一緒に走りたがらなかった。負けるとわかっていたからね。とにかく速くて、優れたアスリートだった。その後、徐々に陸上競技よりもサッカーに専念するようになって、ハイスクールでは完全にサッカー中心になっていた。ピッチの中でも無敵で、いつも目立っていたよ。誰も予測できないような動きで見る者を驚かす選手だった」
ラ・ピカーダでは優れた足技と速さで同年代の選手を翻弄。ペリストリがボールを持つと誰も奪うことができなかったため、コーチ陣がゲーム練習時に「1つは試合用、1つはファクンド用として2つのボールが必要だ」と冗談を言うほどだった。負けず嫌いで、ラ・ピカーダでペリストリを指導したコーチによると「ボールを奪われたら必ず奪い返しにかかり、子供たちがあまり好まないスライディングタックルも果敢にやった」という。
並外れたスピードとテクニックに、ボールに対する執着心も人一倍強かったペリストリは、11歳でウルグアイの強豪ペニャロールのジュニアチームに入団。逸材が集まる名門の下部組織でも群を抜いており、リーグ戦では対戦相手にとって「ペリストリ対策」は必須条件となった。……
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。