7月19日に開幕したEAFF E-1選手権の初戦、香港代表に6-0で大勝し白星発進を切った男子日本代表。非常にフレッシュなメンバーで臨む今回、実力差のある相手との初陣でのパフォーマンスをどう評価すればいいのか。らいかーると氏に分析してもらう。
開始早々の日本のプレッシングと相馬勇紀のFKは、この試合の容易さを示すものとなりそうでならなかった。先制後の日本は、前向きのプレッシングを実行している時は問題を抱えていなかった。しかし、執拗に杉岡大暉方面にロングボールを放り込んでくる香港の策略によって、日本は自陣にボールを運ばれてしまった時や後ろ向きにボールを奪いにいく時に、 相手に突破を許してしまう場面が多く見られた。
才能に疑いはないが、スタメン起用が議論を呼んだGK鈴木彩艶の出番は試合中に何度訪れるだろうか?という試合前の心配は杞憂に終わり、ハイボール処理やカウンターの起点となる場面で判断ミスをしてしまうくらいに鈴木に出番があったことは本人にとってはポジティブでもあり、チームにとってはネガティブでもあるのだろう。
2つの不安定に直面した序盤
日本が露呈した弱点は、ブラジル戦で露呈した弱点と繋がっていた。現時点で“スタメン”であろう選手たちが見せたのと同じように、ハイボールの競り合いを確実にマイボールにできるかどうかはこの試合でも不安定なものであった。
加えてセカンドボールを拾ったところでは、普段のハイテンポに慣れている横浜F・マリノス勢のゲームコントロールと周りの波長が噛み合うまで時間がかかったこともまた事実である。ゆえにセカンドボールやボールを奪ってからの最初の一歩で想定外のつまずきを見せ、先制から20分まではどっちもどっちの試合内容となっていたことは見逃せない部分だろう。
また、香港が人への意識が高いプレッシングをかけてきたこともあいまって、日本はビルドアップでも不安定な立ち上がりを見せる。おそらくは、こんなに前からプレッシングにくるとは……という驚きがあったのではないだろうか。時間の経過とともにプレッシングに慣れていったところはさすがというポイントであるが、急造チームには厳しめの試練となった序盤戦であったことは間違いない。
ここまでの流れから得られる教訓は、仮に同じチームの選手を多めに起用したところで、多少のメリットはあれさすがに時間が足りないということだろう。川崎フロンターレコンビに設計図を書かせ、海外組との知見の融合を図ることでW杯アジア最終予選を突破した森保監督が、今回は横浜F・マリノストリオたちに最初に一歩を任せたことは、今後の日本代表のチーム作りのデフォルトの形として一貫性のあるものとなるのか、 それとも一過性のものとなるのかどうかは見ていきたいところである。
試合の流れを引き寄せた立役者は
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Profile
らいかーると
昭和生まれ平成育ちの浦和出身。サッカー戦術分析ブログ『サッカーの面白い戦術分析を心がけます』の主宰で、そのユニークな語り口から指導者にもかかわらず『footballista』や『フットボール批評』など様々な媒体で記事を寄稿するようになった人気ブロガー。書くことは非常に勉強になるので、「他の監督やコーチも参加してくれないかな」と心のどこかで願っている。好きなバンドは、マンチェスター出身のNew Order。 著書に『アナリシス・アイ サッカーの面白い戦術分析の方法、教えます』(小学館)。