シーズン終了後の6月の代表シリーズ4連戦はどの国にとっても調整が難しい試合となったが、ファン・ハールのオランダ代表はAチームとBチームに明確に分け、目的別に運用するという強化プランで結果(3勝1分)と内容を伴った実り多きシリーズとした。その模様をオランダ在住の中田徹氏がレポートする。
今年3月からオランダは[3-4-1-2][3-4-2-1]システムの足場固めを続けている。6月のUEFAネーションズリーグ4試合をAチーム(レギュラー)、Bチーム(控え、戦力発掘)に分けて戦ったオランダは、いずれもこのシステムの枠内で戦った。しかも、3勝1分という結果も伴った。
Aチームで戦った1戦目(対ベルギー)と3戦目(対ポーランド)のメンバーを見ると、かなりレギュラーは固まったようだ。骨子となるベルギー戦の先発を見てみよう。
GKシレセン CBティンバー、ファン・ダイク、アケ WBドゥムフリース、ブリント MFフレンキー・デ・ヨンク、クラーセン、ベルフハウス FWデパイ、ベルフワイン
シレセンは負傷でポーランド戦をスキップし、Bチームのフレッケンが引き続きゴールを守った。ファン・ダイクはシーズン中の出場時間が飛び抜けて多かったことと、CL決勝を戦った直後ということで、ベルギー戦を終えると休暇に入り、ポーランド戦はデ・フライがCBを務めた。
今回は代表から漏れたもののGKバイローはまだレギュラーの座を狙える。右CBティンバーのところは、セリエAの名門でプレーするデ・フライ(インテル)、デ・リフト(ユベントス)との競争が残っている。
左CBは「左利きのCBを優先したい」という指揮官の方針もあってアケの起用が続いており、このネーションズリーグでさらに評価を上げている。こうしたことからティンバー、デ・フライ、デ・リフトのCBのうち、2人がベンチに座っているという事態が、カタールW杯で本当に起こり得る。
WB、MF、FWは現状のベストメンバーと言えるだろう。
中盤の戦いで優位に立ったベルギー戦。ブリントとティンバーが興味深いやり取り
6月3日のベルギー戦は『低地国ダービー』と呼ばれる由緒あるもの。オランダは敵地でライバルを1-4で下し、実にベルギー相手に25年ぶりの勝利を手にした。
ベルギーのプレッシングが甘いこと、前線の1トップ2シャドーが中盤と分断されること、DFラインのスピードがないことなど、オランダはかなり分析してベルギー対策を練ったようだ。ブリントは試合後、「良い戦術練習ができた」と言っている。指揮官は「中盤が勝利をもたらした」と語った。
ベルギーのセントラルMFウィツェルとファンアーケンに対し、常にオランダは3対2の数的優位を作ったことが肝になった。ベルフハウスとクラーセンのインサイドハーフ陣がベルギーのMFについてアンカーのフレンキー・デ・ヨンクを余らせたり、左WBのブリントが中に絞ってMFに加わったりすることで、オランダは中盤の戦いで優勢に立っていた。
相手のビルドアップを寸断して、ショートカウンターに繋げたことも勝因の1つだった。特にベルフワインの前線でのスピード、テクニック、決定力は、今後のオランダにとって大きな武器になるもの。EURO2020(21年夏開催)ではメンバー落ちし、所属先のトッテナムでは出場機会に恵まれないベルフワインだが、昨年11月以降続く代表での活躍ぶりにファン・ハールに「3位になったブラジルW杯にはファン・ペルシとロッベンがいた。今のオランダにはデパイとベルフワインがいる」「調子はクラブで作るもの。代表チームはリハビリセンターではない。しかしベルフワインは例外。彼は天からの授かりものだ」と言わしめている。
ベルギー戦後の記者会見では、ブリントとティンバーが興味深いことを話してくれた。……
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中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。