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財政再建への苦肉の策。“2本のてこ”でバルセロナは立ち直れるか

2022.06.19

 バルセロナの財政建て直しに不可欠の“2本のてこ”が、6月16日のソシオ総会で可決された。“てこ”とは、腹を見せて瀕死のクラブを引っくり返して起こすための、緊急の資金注入策のことだ。

深刻さは誰の目にも明らか

 1本目は、グッズ販売会社『BLM』の部分的売却。外部資本に経営権の一部分を譲ることと引き換えに、2億ユーロから3億ユーロを引き出す。

 2本目が、放映権収入の一部売却。毎年の収入の25%を25年間譲ることで5億ユーロを引っ張ってくる。投資ファンド『CVC』に放映権料の10%を50年間にわたって売る、というラ・リーガの提案を「クラブの将来を担保にするつもりはない」と断ったラポルタ会長だったが、大差ないプロジェクトを提案せねばならなかったわけだ。

 2本のてこによる注入資金額は、7億から8億ユーロに上る。これにより、今月末の2021-22シーズン決算で6億ユーロの赤字が出るはずだったのが一転黒字になり、借金返済に目途が立って財政的に一息つけることに加え、決算を元にラ・リーガが算出するチームの年俸枠も拡大されて今夏の補強が可能になると踏んでいる。

 投票前のソシオたちには、守秘義務のために企業名も確かな金額も示されない、という“白紙委任”に等しい状態だった。それでもGOサインが出されたのは、危機の深刻さが誰の目にも明らかだからだ。

主力に売却の噂が続々

 例えば、「未来を担う」とされたフレンキー・デ・ヨングが売りに出されている。放出はオフィシャルにはなっていないが、「良いオファーなら売る」という姿勢のようで、マンチェスター・ユナイテッドが獲得に名乗りを上げている。

 将来の会長候補ピケにも放出の噂が出ている。バルセロナ系のメディアによると、シャビが直々に戦力外を告げたとされる。ご存知のように、コロンビアの歌姫シャキーラとの別離、スペインスーパーカップ開催にまつわる連盟会長ルビアレスとの癒着疑惑など、私生活面でトラブルが続いていることに加え、ケガが増えていることが理由とされる。

 さらに、代表での活躍で株が急上昇、移籍は絶対に避けなくてはならないガビとの契約更新が難航しているのも、年俸枠との絡みである。

 2本のてこによって年俸枠は拡大する。だが、それだけでは膨れ上がった年俸を吸収することはできない。現在レアル・マドリーの1.4倍に達している年俸総額を、少なくともレアル・マドリー並みに下げる必要がある。

 そのために、高額年俸選手の放出と減給での契約更新というドラスティックなオペレーションが今夏予定されている。この年俸削減策こそが“3本目のてこ”なのである。補強の陰で涙を呑む者は誰だろうか。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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