パラグアイ戦での堂安律はエネルギッシュに自由にプレーしながら、守備に切り替わると激しく敵に寄せに行き、カウンター時には中間ポジションで巧みにボールを引き出した。23歳のウインガーはPSVでの1年間を経て、ハイインテンシティを要求する森保監督の日本代表にフィットする選手に成長していた。オランダで継続取材していた中田徹氏が感じた堂安の変化をレポートしてもらおう。
「今シーズン、すごく充実した1年間だった」
5月31日、日本代表合宿中の記者会見に応じた堂安律は、21-22シーズンをこう振り返っていた。
昨年夏、貸出先のビーレフェルトから復帰し、“PSV第二期”を迎えた堂安はオランダリーグに24試合出場。うち先発は17試合に留まったが、ガクポ(12ゴール)、サハフィ(11ゴール)に次ぐ8ゴールを叩き出した。とりわけ昨年11月、12月の絶好調時には、堂安のテクニック、決定力、頭脳的なプレーが再三に渡りオランダメディアで取り上げられた。
「考え過ぎないでプレーするのが大事」
PSVは昨季に引き続き2位でフィニッシュしたが、優勝したアヤックスとの差は20-21シーズンの勝ち点16から勝ち点2へと大きく縮まった。また、堂安にとって初のタイトルとなるKNVBカップも獲得している。
好調の要因を堂安は「何も考えずにサッカーを楽しんでいる時が調子いい。この2年で――ビーレフェルトに移籍してからPSVでプレーする今シーズンまで――そのいい感覚を取り戻しています。考え過ぎないでプレーするのが大事だと思います」と語った。
“PSV第一期(19-20シーズン)”の堂安は逆に「考え過ぎていた」という。フローニンゲンではエースとして個の力を存分に発揮していた堂安だったが、PSVには規格外のアタッカーが何人もいた。その中で堂安は個の力で打開することと、味方を活かし活かされることのバランスに苦心しているように思えた。
当時のチーム状態も良くなかった。指揮官がファン・ボメルから、フローニンゲン時代の師だったファーバー(PSVでは暫定監督)に代わっても、むしろ堂安の出場機会は減るばかりだった。
「PSVに移籍した1年目なんかは考え過ぎて自分のプレーを分析したり、試合を90分見て『こうしたらいい』とか考え過ぎたりしてしまった。悪いプレーを分析してしまうと、(試合中に)そのシーンになった時に悪いプレーが頭をよぎってしまった。これは『ウインガーの選手あるある』だと思うんですが、それでは良くない。逆にいいシーンを多く見るようにしています」(5月31日の会見時の堂安。以下同じ)
競争相手を意識しないことで生まれたメンタルの安定
“PSV第二期”の堂安を見続けて「メンタルのムラが減ったな」と私も感じていた。……
Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。