セリエAで、ビデオ判定のチャレンジシステムが将来的に導入される可能性が出てきた。レガ・セリエAのロレンツォ・カジーニ会長が示唆した。
セリエA会長が言及
カジーニ会長は国営放送『RAI』のラジオ番組の取材を受け、VAR導入後も判定を巡って議論が絶えないことについて言及。
「VARが深く誤解されている。あれはビデオ検証ではないのだが、世論の間ではどうもそういう方向で理解されているようだ」と、VARルームでのレビューなどを巡っても批判が噴出する現状を憂いた後、「この実験段階においては改良のための議論がなされるべきだ」として「各チームに判定のチャレンジの権利を与える可能性について検討するのも正しいことだ」との構想を明らかにした。
現在、プロテニスの試合では、判定が選手にとって不服だった場合にビデオ判定による再ジャッジを申し出る制度が確立されている。
カジーニ会長はそれに倣って「試合中、一度か二度だけでも、プレーの場面のジャッジについて各チームに再検討を要請する権利を与えるのは、試合時間を複雑なものにしないという意味でも良いことだ」との考え方を示した。
VAR導入後も続く誤審
VAR導入後も論議は絶えず、特に今季は「レビューにも誤審がある」との批判も続出した。第36節のフィオレンティーナvsローマ戦(2-0)では、マルコ・グイダ主審がPKの判定についてVARルームから再検証を求められながらも結論を変えなかったが、リプレイ映像を目にした関係者からはファウルは確認されず、誤認ではないかとの批判が出ていた。
また、ベネツィアvsボローニャ戦(4-3)でも同様にベネツィアの同点ゴールに繋がるPK判定が出たが、これもレビューの時点で誤審が生じたとの批判も飛び出した。ボローニャのシニシャ・ミハイロビッチ監督は試合後「主審は試合後にそそくさと逃げた。やましいことだったという意識があったのではないか」と皮肉のコメントを出した。
ただし、チャレンジ制度の導入については否定的な見方も多い。「イタリアでは些細なコンタクトプレーでPKと判定するような、国外リーグとは逆の状況が起こっている。ここでチームにチャレンジの権限を与えるのは危険だ」とする意見や「VARルームで分析は済んでいるのでチャレンジ自体が無駄」という意見もメディアからは出ている。
また、配信サービス『DAZN』でジャッジ解説を務める元審判のルカ・マレッリ氏は「新しいシステムの導入自体には常に賛成」としながらも「チャレンジを導入するには国際サッカー評議会の承認を得てプロトコルを変えなければならず、一国のサッカー連盟では無理。どのみち整えるとしても2023-24シーズン以降になるのではないか」との見方を示した。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。