昨シーズンと同じく短期集中開催となったAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージは早くも佳境を迎えている。ここまで好調の日本勢だが、そもそものレギュレーションに加え出場辞退クラブが出たこともあり、ノックアウトステージ進出条件が複雑なものとなっている。勝負の残り2節を前に、勝ち上がりレギュレーションをおさらいしておこう。
4月、アジア各地で開幕した2022シーズンのACL。新型コロナウイルスに伴う渡航規制が続いている影響により、グループステージは前回大会同様セントラル会場での一斉開催に。日本からは川崎フロンターレ、浦和レッズ、横浜F・マリノス、ヴィッセル神戸の4クラブが参加し、東南アジアの地で厳しい連戦をこなしている。
グループステージ第4節を終えた東地区では日本勢全クラブが首位に立っており、いたって順調に成績を残しているように見える。しかし、ならばノックアウトステージ進出が安泰かというとそうでもないのが今のACL。グループステージ突破に当確ランプが灯っているのは後述の理由で3チーム制グループを戦っている神戸くらいで、他の3クラブは決して油断できない状況にある。
日本勢の現在の状況
最も厳しい状況なのが、グループFを戦っている浦和だ。現在は大邱FC(韓国)、ライオン・シティ・セーラーズ(シンガポール)と勝ち点7で並び順位表では一番上に立っているが、にもかかわらず自力での首位通過はできないという奇妙な状況に置かれている。ACLでは“グループ内の得失点差”よりも“当該対戦での得失点差”が優先される以下のような順位決定方法が取られているため、運命は他チームの勝敗に委ねられているのだ。
①グループでの勝ち点
②勝ち点が並んだチーム間対戦での得失点差
③勝ち点が並んだチーム間対戦での総得点
④グループでの得失点差
⑤グループでの総得点
⑥順位を争うチームが最終節を戦っている際はPK戦
⑦反則ポイント
⑧加盟協会のAFCランキング
現在は②の条件に基づき浦和、大邱FC、ライオン・シティの3チームの対戦成績で暫定順位が決定。3チーム間の対戦時における得失点差で優位の浦和が首位となっている。しかし、最後まで“三つ巴”状態が続く可能性は低く(残り2節4試合がいずれも引き分けの場合のみ)、勝ち点が並ぶとしても2チームになると見られる。
そうなった場合、浦和はライオン・シティ・セーラーズとは大会初戦で4-1の勝利を挙げており上回れる可能性が高い。しかし、大邱FCとはすでに2度の対戦を終えており、直接対決の合計スコアは0-1のビハインド。すなわち、浦和は残り2試合を(たとえ10-0の大量得点差で)2連勝したとしても、大邱FCが同じく2連勝した場合2位転落となってしまうのだ。これが「首位なのに自力突破の権利はない」という奇妙な状況のカラクリだ。
一方、勝ち点差をつけてグループ首位に立っている川崎、横浜FM、神戸は自力でのノックアウトステージ進出の可能性を残しており、浦和に比べれば有利な状況と言える。だが、この直接対決優先の大会レギュレーションがあるため、今後上位勢に敗れることがあれば勝ち点のみならず順位決定条件でも不利に働く懸念がある。
不測の事態に伴う2位決定方式の複雑化
ここまで読んでいて「グループ2位でもノックアウトステージに進出できるのでは……」という疑問を持つ人もいるかもしれないが、それはもう過去の話。現在のグループステージは東地区の各グループ首位5チームと、各グループ2位の成績上位3チームしかノックアウトステージに進出できないレギュレーションとなっているのだ。浦和が決勝に進出した2019年大会や、鹿島アントラーズが頂点に立った2018年大会はそれぞれグループ2位での突破だったが、2位でも安心できないのも今のACLだと言える。
こうしたレギュレーションとなったのは前回大会から。アジアサッカー連盟(AFC)の方針によって大会規模が拡大され出場枠が32チームから40チームとなったことに伴い、東地区グループステージが「16→8」から「20→8」の関門に変わった。この改革により、これまで安定的に出場してきた日本、韓国、中国、豪州、タイだけでなく、香港、フィリピン、マレーシア、ベトナムのクラブに門戸が大きく開かれるメリットがあった。一方、日本などからの最大4枠は原則変わっておらず、強国にとってはやや厳しい変更となっている。
各グループ2位からの勝ち上がりは、以下の条件で決定される。他グループは直接対決を行わないため、一見いたってシンプルだ。
①勝ち点
②得失点差
③総得点
④反則ポイント
⑤抽選
ところが今大会に限っては、ここにもう一つ複雑なレギュレーションが登場する。各グループ2位の順位を検討する際に「最下位チームとの対戦成績は算入しない」というものである。……
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竹内 達也
元地方紙のゲキサカ記者。大分県豊後高田市出身。主に日本代表、Jリーグ、育成年代の大会を取材しています。関心分野はVARを中心とした競技規則と日向坂46。欧州サッカーではFulham FC推し。かつて書いていた仏教アイドルについての記事を超えられるようなインパクトのある成果を出すべく精進いたします。『2050年W杯 日本代表優勝プラン』編集。Twitter:@thetheteatea