セリエAで大きな注目を集めているDFがいる。トリノのブラジル人DFブレーメルだ。4月10日の第32節ミラン戦ではオリビエ・ジルーらを軸とした攻撃陣を完璧に抑え切り、首位クラブ相手にスコアレスドローをもぎ取った。
今季はハイレベルなパフォーマンスを展開しており、1対1にも負けなければ、プレーを的確に読んだカバーリングも秀逸である。
欧州ナンバー1の数字を並べる
スタッツに出ている数字も圧倒的だ。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』によれば、インターセプトの成功数(100)、ボールの回収数(256)、空中戦の勝利数(253)すべてで欧州ナンバー1の数字を叩き出しているという。
地元紙『ラ・スタンパ』は「ベテランのような安定感と、自分の実力には限りがないことを自覚した自信のようなものがみなぎり、完璧な名選手となった」という言葉でパフォーマンスを称賛した。
好調は当然、クラブの成績にも還元されている。データ集計会社『OPTA』によれば、トリノは上位10位とのクラブとの対戦で最も少ない失点を記録しており、存在感は明白なものとなっている。
国内外のビッグクラブから関心
当然、来夏のメルカートの目玉として注目されている。イタリア国内のメディアの間ではインテルやミランが興味を示し、さらにアーセナルやリバプールなどの海外クラブも大型のオファーを準備しているとの報道が出ている。
国内メディアはインテルが交渉に先行していると報道。ブレーメルは映像配信サービス『DAZN』のインタビューで「僕は3バックで爆発したし、やり慣れている。やるならこのシステムを好む」と、現在プレーする3バックでのプレーが合っていると語っており、これを受けて各メディアでは「インテルへのラブコールか」などと報道されている。
一方、注目されるのは、果たしていくらで売り抜けるのかということだ。ブレーメルは2月にクラブとの契約を1年間延長し、2024年6月までとした。ステップアップへの意思を明確にしつつ、移籍金収入を得たいとするクラブの意志にも配慮を見せたことに「トリノに落ち着いて他のクラブと交渉することを可能にさせる驚くべき決断で、私は賞賛する」とイバン・ユリッチ監督から歓迎の意思を示されていた。
もっとも、その状態で推定される移籍金は2500万ユーロ程度とも推定されており、地元トリノを本拠とする『トゥットスポルト』からは「今なら少なく見積もってもその2倍の移籍金は望めるはず。長期契約にしなかった(ウルバーノ・)カイロ会長のオウンゴールだ」と後出しで批判されている。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。