CL準々決勝8カードの中でも好対照なスタイルの激突となったマンチェスター・シティ対アトレティコ・マドリー。アトレティコが戦前の予想をはるかに超えた[5-5-0]ブロックを敷いたことでも話題となった一戦のキーポイントについて、サウス・ウェールズ大学に通う学生アナリストでこの試合を現地で見届けた白水優樹氏に分析してもらった。
マンチェスター・シティの「超攻撃的」な0トップに対抗するために、アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督が下した決断は「超守備的」な0トップだった――両者のスタイルが極端に現れた第1レグのストーリーを分析していく。
1.[5-5-0]は奇策だったのか
前提として、アトレティコは試合開始直後から[5-5-0]のシステムを敷いて守っていたわけではない。15分までは予想通りの[5-3-2]のシステムで戦っていた。そして、おそらくシティはこのシステムでの戦いが続くことを想定していたと思われる。
この配置の守備ブロックを崩す上での1つの定石は、中盤3人の脇のスペースを基点にして素早くボールを動かし、DFラインの選手を釣り出したところで生まれたギャップを狙うというものだ。実際、シティは左サイドでは主にイルカイ・ギュンドアン、右サイドでは主にジョアン・カンセロがアトレティコの中盤の脇に立ち、このスペースを活用していこうとする。特に、左サイドではSBのナタン・アケが運びながらギュンドアンを押し上げるプレーでアトレティコの中盤を引きつけ、右サイドのカンセロへ展開するという形を多く見せていた。
このシティの攻撃に対応するために、アトレティコは前半の15分あたりからジョアン・フェリックスを左サイドに下げて[5-4-1]のブロックを形成することを選択した。しかし、対するシティは大外から大外へのサイドチェンジを繰り返してサイドからの打開を図っていく。そのため、5分後にはアトレティコはアントワーヌ・グリーズマンを右サイドに下げ、DFラインとMFラインがそれぞれ5人ずつ並ぶ[5-5-0]守備ブロックを形成するようになった。ただ、これが初めから用意されていたものなのかどうかはわからない。なお、後半には再び[5-4-1]のシステムに戻している。
2.鉄壁のブロックに生じた1つの穴
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