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「スポーツ増、カルト減」で1部復帰へ。高まるザンクトパウリへの期待

2022.04.02

サッカー界でも随一の「カルトクラブ」としてその名が知られるザンクトパウリが、ブンデスリーガ2部第27節を終えてリーグ首位に浮上。12シーズンぶりの1部昇格へ向け奮闘している。近年、急速に進むサッカービジネスの発展に対して嫌悪感を抱くファンからも支持を集める彼らの、ピッチ外での変わらぬ姿勢とピッチ内での変化とは?

※『フットボリスタ第89号』より掲載

 オケ・ゴットリッヒ会長は長年、何度も同じ主張を聞かされてきた。

 「ザンクトパウリはすべてを正しく行うクラブだ。ピッチ以外では」

 ドイツ第2の都市ハンブルクを拠点とする2つのプロクラブのうち“小さい方”である彼らは人気があり、経済的に健全であり、パンデミックでさえ比較的うまく乗り越えてきている。クラブの首脳陣は、業界の行き過ぎた商業化を批判するだけでなく実際に行動にも移しており、例えば持続可能な方法で作られたユニフォームを提供できるサプライヤーを見つけるのが不可能だとわかると、なんと自分たちで会社を立ち上げ労働者を搾取したり環境を汚染したりすることなく製作を始めさえした。そうして、嫌気がさしたサッカーファンからの共感を得ている。

 一方、ピッチの上では昨季も残留争いに巻き込まれた。だが、今季は1部昇格が手に届く位置につけているだけでなく、それ以上に大きなことを成し遂げる可能性がある。ライバルのハンブルクを凌駕することだ。「ザンクトパウリがハンブルクを追い越した」と地元紙『ハンブルガー・モルゲンポスト』は伝える。今季、魅力では2部以下とさえ言われたブンデスリーガ1部はもうじき、本当に濃艶な新顔を迎えることになるかもしれない。

ピッチ外では「最大の批判者」

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ザンクトパウリ

Profile

ダニエル テーベライト

1971年生まれ。大学でドイツ文学とスポーツ報道を学び、10年前からサッカージャーナリストに。『フランクフルター・ルントシャウ』、『ベルリナ・ツァイトゥンク』、『シュピーゲル』などで主に執筆。視点はピッチ内に限らず、サッカーの文化的・社会的・経済的な背景にも及ぶ。サッカー界の影を見ながらも、このスポーツへの情熱は変わらない。

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