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福山シティの新たな戦い。バレイン下関との開幕戦で見えた「3年目の進化」

2022.04.01

「地域課題解決型総合クラブ」として壮大なビジョンを発表した2019年から3年、福山シティは当時22歳の小谷野拓夢監督を抜擢するなどユニークな方針で注目を集めてきた。順調に階段を駆け上がり、今季いよいよ5部相当の「中国地域リーグ」に参戦する。その開幕戦を当時からクラブを追い続けるジェイ氏がレポートする。

 初めてその名前が世に出てから3年、福山シティFC(※当時は福山SCC)はついに新たなステージへと駒を進めた。J1から数えれば5部相当、この「中国地域リーグ」を突破すれば、全国リーグへであるJFLへの視界が開けることとなる。

 コロナ禍にあって、その歩みは1年遅れた(※2020シーズンは中国社会人リーグへの昇格が行われなかった)が、着実に力を蓄えてきた。2020年に(特殊なレギュレーションながら)天皇杯でベスト8まで進出。昨年は2回戦でJ1清水エスパルスと対戦し、惜敗したものの王国・静岡にそのサッカーを知らしめた。

 そして先日、新たなシーズンの幕開けとなる一戦に臨んだ。相手は一昨年の天皇杯でも対戦したバレイン下関。昨季はリーグ2位の成績を収め地域CLの舞台も経験しており、今季を占う試金石となる相手だ。

地域CL出場のバレイン下関をコントロール

 「バレイン下関は同カテゴリーでJリーグ参入を目指しているチームの1つなので、チーム全体で『開幕戦の結果がリーグ優勝に直結する』という意識で取り組んでいました」(小谷野拓夢監督)

 しかし試合が始まってみると、下関の関係者だろうか、スタンドから「去年の方が強かったんじゃないか」「23番(※吉井佑将/J3讃岐へ移籍)がいなくなったのが大きいのでは」といった声が聞こえてくる。確かに、期待値からするとやや地味な印象ではあったかもしれないが、試合が進むに連れてその声は「やっぱりうまいなあ……」といった感想に取って変わっていった。

 この試合でまず驚いたのは、福山のシステムだった。小谷野監督就任以来、過去2シーズンはほぼ一貫して[4-1-4-1]を採用。まるでマンチェスター・シティかと見まがうようなサッカーを披露してきたが、この日は3バックの布陣だった。

 守備時は[5-4-1]を基本としつつ、攻撃時は少し複雑な変形を見せる。[2-3-5]ないし[2-4-4]と言うべきか、3バックの一角が前方へ進出して、最終ラインは2CB+GKでビルドアップしていく。

 大仰な可変ではあったが、試合を振り返ってみると、下関は有効なプレッシングをほとんど行えなかった。[3-4-3]でプレスに出たそうなそぶりを見せつつも、各所で優位を作られ続け、終始撤退守備を強いられる展開が続いた。

 試合序盤は「アウェイの開幕戦で緊張もあり、ピッチが硬くてやり辛い部分もあった」(小谷野監督)とつなぎのミスが散見され、開始早々に敵陣FKのクリアからカウンターを浴び、さらに相手FKのこぼれ球からピンチを迎えるもこれはGK児玉潤がストップ。

 徐々に落ち着きを取り戻すと、次第に下関を押し込み始める。下関ゴール前でのプレーが多くなってきた中、混戦から新加入の名執龍が左足でシュートを放つと、これがDFに当たってハンドの判定に。田口駿がPKを決めて25分に先制に成功した。

 「満足度で言うと60~70点くらいですが、『こういうゲームをしなければいけない』という最低限はクリアできたと思います。準備したことを発揮できていましたし、何回かピンチはありましたが、準備してきた中の起こり得るピンチだったので。予想の範囲内でのゲームコントロールはできていたのかなと思います」

 小谷野監督は試合をそう振り返ったが、得点はこの1点に留まりつつも、その後も試合は終始、福山のものだった。下関は昨季の地域CLで高いポゼッション能力を示していたが、この日は西田憲誌朗のスピードなど、背後を狙ったカウンターに活路を見出そうとする攻撃が多くなり持ち味を発揮できず。リーグの先にある地域CLを見据える上でも自信となる勝利だった。

なぜ、[4-1-4-1]を継続しなかったのか?

 しかし気になったのは、なぜこれまで成熟させてきた[4-1-4-1(4-1-2-3)]を継続するのではなく、システムの変更に踏み切ったのか。小谷野監督にその意図を問うてみると、プランの一端を明かしてくれた。……

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バレイン下関戦術福山SCC福山シティFC

Profile

ジェイ

1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。

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