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他競技との兼用、芝問題、アクセス、座席数――スタジアム設計のトップランナーとスポーツビジネスのプロフェッショナルに聞く、スタジアム・アリーナビジネスの現状と未来(後編)

2022.03.27

去る2022年2月1日、梓設計スポーツ・エンターテインメントドメインのアドバイザーに、Blue United Corporationの中村武彦President & CEOが就任したことが発表された。埼玉スタジアム2〇〇2をはじめ数多くのスポーツ施設を手がけてきた日本のスタジアム・アリーナ設計のトップランナーと、世界を股にかけスポーツビジネスを展開する専門家が目指すものとは。協業の経緯に加え日本のスタジアム・アリーナの現状に関するプロフェッショナルの意見、そしてそこにどう一石を投じようとしているのかというビジョンについて、梓設計常務執行役員/スポーツ・エンターテインメントドメイン長の永廣正邦氏と中村氏の両名に語ってもらった後編。

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ラグビーとの兼用は可能か。「芝問題」への見解

――日本のスタジアム・アリーナビジネスには十分に可能性があるということですね。では次に、今お話に挙がった「マルチなスタジアムの活用法」に関する話題として、サッカーとラグビーの兼用についてお聞きします。同じような大きさのフィールドを使う競技でありながら現状あまり同居している例が多くないように感じられるのですが、両競技の施設の設計に携わっている永廣さんはこれについてどのようにお考えでしょうか?

永廣「フィールド自体は同時に使用することが本当は可能です。大規模のスタジアムを地域にいくつも作れるわけではないですし、同じ都市にサッカーチームとラグビーチームがあるわけですから併用できるのがいいと感じています。

 ただ、問題になってくるのが芝です。釜石のスタジアムにはハイブリッド芝を採用しています。Jリーグのスタジアムでハイブリッド芝を採用しているところはごくわずかですが、近年人工芝が技術的にものすごく進歩して天然芝に近くなってきており、あと2、3年すればさらに改良されると思います。Jリーグのレギュレーションが変わるぐらいに人工芝が進化すれば、マルチユースでいろいろなことができるのではないかと感じています」

中村「私の会社ではハワイでのサッカー大会を主催していますが、ハワイは常夏でそもそも天然芝のスタジアムは向いていません。さらにアメフトで使用することもあり人工芝になっているのですが、大会を開くとなった際に人工芝と聞くと8割くらいのチームは難色を示します。また、ハワイではラグビーも人気で大会が開かれたこともあるのですが、ラグビーでも人工芝だと転んだ際に膝が焼けるなどの問題があります。ただ、新スタジアム建設が予定されていてそこはサッカー、ラグビー、アメフト兼用になると発表されています。

 個人的な意見としては、人工芝でもいいのではないかと考えています。MLSでも人工芝のスタジアムを本拠としているクラブはありますし、女子ワールドカップでは選手から批判の声が出たようですが多くの試合が人工芝のスタジアムで行われました。永廣さんがおっしゃったように最近の人工芝は高性能になってきていてFIFA公認のものもありますし、また運営費の面で言えばメンテナンスフィーが下がりますのでどう考えても人工芝の方が良いと感じます。他競技の話をすると、それほど予算のない(野球の)マイナーリーグや大学スポーツのチームが新スタジアムを作る時はほとんどが人工芝です。

 サッカーでもアマチュアの選手たちは人工芝でプレーしていることが多いですがそれが原因で頻繁にケガをするという話は聞きませんし、むしろユニフォームやスパイクが汚れなくていいと言っているくらいですからね。客観的なデータを踏まえて今後どう議論が変わっていくかではないかと思います。

 確かに、日本の天然芝は世界的に見てもトップレベルに綺麗です。真っすぐに、画一的に刈られていて本当に世界レベルなのは間違いありませんが」

――Jリーグの場合は雨期に試合をしているので、ピッチがボコボコになってしまう場面を目にします。むしろ人工芝であればそういった問題は軽減されるでしょうし、世界的なスタジアムでもハイブリッド芝が採用されていることを考えると、今後検討していくべきなのかなとお話を聞いて感じました。

中村「1つ面白い話がありまして、随分前にアイルランド代表がアメリカツアーを行った時のことなのですが、練習場は天然芝じゃないとダメだということだったのでニューヨーク近郊の練習場を一日かけて7つほど一緒に回りました。ただ、『ボールがグライドしないといけない』などと言って目の前で芝を借り直したりしてもどこも納得しなくて、結局『ここが一番いい』と選んだのが人工芝のところだったのです。だから言ったじゃないかとなりました(笑)」

――先ほどのトラック併設についてもそうですが、このあたりは技術の進歩によって補っていけるようになる可能性がありますよね。例えば、トラックの位置に観客席が競り上がってくるような構造にすることでトラック併設問題は解決できるでしょうし。……

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スタジアム中村武彦梓設計

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。

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