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財政難に苦しむバルセロナ。来夏のホーランド獲りへ秘策はあるのか

2022.03.20

 先日、ラ・リーガが各クラブのいわゆる“サラリーキャップ額”を発表し、バルセロナが唯一、1億4400万ユーロのマイナスであることがわかった。

自由な補強はできない

 “サラリーキャップ額”というのは「これだけの額に年俸を抑えておかないと黒字が出ませんよ」というラ・リーガ独自の目安で、前期の収支実績や今期の収支見込みから算出される。

 サラリーキャップという通称から「選手の年俸総額」と誤解されがちだが、実際にはトップチームの選手だけでなく、監督と第二監督、フィジカルコーチ、下部組織の選手のサラリーと社会保険料、さらに1年分の移籍金(移籍金を契約年数で割ったもの)や代理人へのコミッションも含まれている。クラブの「選手の維持と獲得に関する総出費」という解釈が実態に近い。

 では、これがマイナスというのはどういうことかというと、簡単に言えば、バルセロナは1億4400万ユーロを減らさないと健全な経営はできない(とラ・リーガが判断した)という意味だ。

 バルセロナの財政悪化を表す指標は、「年間収支マイナス」や「巨額負債」など、他にいくらでもある。それらに比べると、ラ・リーガのおススメ額というのは緊迫度が低いのだが、マイナスのクラブ(今回はバルセロナだけ)にはちゃんとペナルティがある。補強はできるが、自由な補強ができないのだ。

 バルセロナは冬の移籍市場でフェラン・トーレスアダマ・トラオレ、ピエール・エメリク・オーバメヤン、ダニエウ・アウベスを補強した。彼ら4人分の年俸+移籍金(の半年分)の出費を、コウチーニョらの放出と契約更新したジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、サミュエル・ウムティティらの年俸減額分で賄うことができたからだ。

 とはいえ、出費分と節約分が等価交換されたのではなく、1の出費のためには4の節約が必要だった。この「出費対節約=1対4ルール」こそがペナルティであり、“補強したければそれ以上に節約しなさい”というラ・リーガからのお叱りとご指導なのである。

“ウルトラC”は実現するか

 ただ、来夏に目を向けると、節約術だけでは年俸手取り1億ユーロと言われるアーリング・ホーランド獲りが叶わないのは明らか。クラブ周辺からは獲得を断念するようなメッセージや、「接触は一切ない」(ラポルタ会長)といった声が出始めているが、手がないわけではない。2022-23シーズンがいかに財政的に明るいシーズンであるかをラ・リーガに提示できれば、サラリーキャップは劇的に引き上げることができるのだ。

 先日、楽天の後継者としてSpotifyとのスポンサー契約が発表された。来季から胸にロゴが入るだけでなく、カンプノウは「Spotifyカンプノウ」と呼ばれることになる。

 加えて、ラ・リーガ主導の投資ファンド『CVC』の融資を受ける、という“ウルトラC”も噂されている。将来の50年分の放映権料を担保にしたこの融資を、バルセロナは一度断っている。レアル・マドリーとともにヨーロッパ・スーパーリーグ構想に賛同している彼らは、ラ・リーガに将来を束縛されることを恐れたのだ。もし、一転受諾ということになればレアル・マドリーは孤立し、スーパーリーグ構想は完全に死ぬ。

 ホーランドをめぐりバルセロナがどう動くのか。今後に注目である。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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