今年2月28日、Jリーグ理事会でコバルトーレ女川(東北1部)、東京23FC(関東1部)、高知ユナイテッドSC(JFL)、沖縄SV(九州)の4クラブが新たに百年構想クラブに認定された。『フットボール風土記』の著者である宇都宮徹壱氏は、ここに「ある変化」を感じたという。あらためて百年構想クラブのあり方を考察する前後編。
後編は、コバルトーレ女川、高知ユナイテッド、沖縄SVの3クラブが認定されたことから見える「百年構想クラブの変化」という仮説を掘り下げてみたい。
Jリーグを目指す「仮免」から「イベント」へ
2022年2月28日、新たに4つのクラブをJリーグ百年構想クラブに認定することが、Jリーグ理事会で決定した。すなわち、コバルトーレ女川(東北1部)、東京23FC(関東1部)、高知ユナイテッドSC(JFL)、沖縄SV(九州)である。
この日は、鈴鹿ポイントゲッターズ(JFL)の百年構想クラブ資格が解除条件付き資格停止となることが発表されている。キングカズこと三浦知良が加わったこともあり、こちらの方がニュースになっていた。が、かつて取材したクラブが4つ同時に百年構想クラブに認定されことが、個人的には驚きであった。
百年構想クラブは、2013年までは「Jリーグ準加盟クラブ」という名称であった。ところが翌2014年にJ3が創設され、JFLに所属していた準加盟クラブの多くがJ3クラブとして迎えられることとなると、これに代わる新たな資格が必要となった。そこで2014年から、新たに「Jリーグ百年構想クラブ」が設けられることとなる。
百年構想クラブはJ3ライセンスの手前、いわば「仮免」である。それでも最近は、Jリーグから認定を受ける電話をクラブ代表者が受ける映像が地域のニュースで流れるようになり、ホテルの広間を借りてのメディア向け会見も行われるようになった。百年構想クラブ認定が、ある種のイベント化したのは、わりと最近の話である。
現在、鈴鹿を含めて百年構想クラブは14。内訳はJFLが8、地域リーグが6となっている。認定を受けるには、尋常ではない数と量の資料を提出しなければならない。加えて、ホームタウンとなる自治体との関係性や地域での浸透度など、定量的のみならず定性的なアピールも不可欠だ。
今回、新たにJ3への入り口にたどり着いた4クラブのうち、東京23については「やっと決まったか」という思いの方が強かった。2003年に東京都4部から関東1部まで、何度かの足踏みをしながらも一貫して「東京23区から初のJクラブを目指す」と標榜していたからだ。ホームタウンである江戸川区との関係性も良好と聞く。
一方でJFLの高知、そして地域リーグのコバルトーレと沖縄SVについては「おめでとう!」と思ったのと同時に、「え、決まったの?」という驚きも大きかった。なぜ、そう思ったのか。以下、過去の取材経験から理由を語っていく。
新・百年構想クラブ、それぞれの課題とは?
……
Profile
宇都宮 徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。2010年『フットボールの犬』(東邦出版)で第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞、2017年『サッカーおくのほそ道』(カンゼン)でサッカー本大賞を受賞。16年より宇都宮徹壱ウェブマガジン(https://www.targma.jp/tetsumaga/)を配信中。