コロナ禍により、日程変更から試合の中断まで前例のないトラブルに見舞われたW杯南米予選も、いよいよ今月に行われる第17節と第18節をもって終了する。
残る2節では、5カ国が2.5枠を僅差で争う激戦が展開される一方、昨年11月に行われた第14節で早くも本大会への出場権を獲得したアルゼンチン代表は、ユース世代の選手を積極的に招集して話題を呼んでいる。予選最後となる今回の招集でも、国内でも無名の選手を含む欧州在住の若手がメンバー入りを果たして注目されている。
名手のジュニアたちも続々招集
第17節のvsベネズエラ戦(現地時間3月25日、ホームにて開催)と最終節のvsエクアドル戦(同29日、アウェイ)に向けてリオネル・エスカローニ監督が招集した44人の予備登録メンバーの中には、欧州のクラブの下部組織でプレーする10代後半の選手が7人も含まれているが、そのうち2人は既にイタリアのユース代表に参加した経歴がある他、4人は父親もプロサッカー選手だったというバックグラウンドを持つことから関心を集めている。
7人のうち、アルゼンチンのサッカーファンの間で名を知られているのはルカ・ロメロ(2004年11月18日生まれ、ラツィオ所属)とマティアス・ソウレ(2003年4月15日生まれ、ユベントス所属)。ロメロはアルゼンチン人の両親のもとメキシコで生まれ、メキシコ、アルゼンチン、スペインの国籍を持つ。父ディエゴは元プロサッカー選手で、ジュニア時代から才能を発揮し「メキシコのメッシ」と呼ばれたが、自分の意志でメキシコ代表ではなくアルゼンチン代表を選択した。
ユベントスでU-23チームのメンバーでありながら既にトップチームでベンチ入りを果たしたソウレは昨年11月にもメンバー入りし、今回が2度目の招集となる。2人とも、今後の代表を支えるキープレーヤーとして指導陣からも大いに期待される存在だ。
バレンティン・カルボーニ(2005年3月5日生まれ、インテル所属)とフランコ・カルボーニ(2003年4月4日生まれ、インテル所属)は、98年から2005年までラヌースでプレーし、イタリアのカターニア在籍歴もあるエセキエル・カルボーニの息子たちだ。ともにアルゼンチンで生まれ、ラヌースのジュニアチームでプレーしていたが、父エセキエルがイタリアで指導者としてのキャリアを始めたのを機に一緒に移住。既に昨年、バレンティンがU-17代表、フランコがU-18代表とそれぞれイタリアのユース代表メンバーに選ばれて試合に出場している。
また、ニコラス・パス(2004年9月8日生まれ、レアル・マドリー所属)はアルゼンチン代表として1998年W杯に出場したパブロ・パスの息子。父が所属していたテネリーフェの下部組織でサッカーを始め、現在はレアル・マドリーのU-18チームでプレーしている。
A代表に慣れることが目的
リオネル・メッシと同じロサリオ出身のティアゴ・ヘラルニック(2003年3月31日生まれ、ビジャレアル所属)は、リーベルプレートの下部組織を経て2020年にビジャレアルに加入。フランスで開催されたトーナメントにU-16アルゼンチン代表として出場し、大会MVPに選ばれた。
スペイン生まれのアレハンドロ・ガルナチョ(2004年7月1日生まれ、マンチェスター・ユナイテッド所属)はアトレティコ・マドリーの下部組織出身。スペイン『マルカ』紙によると、クリスティアーノ・ロナウドへの憧れからレアル・マドリーとドルトムントからのオファーを断り、マンチェスター・ユナイテッドに加入したという。また、昨年10月にはU-18スペイン代表としてプレーしている。
アルゼンチン代表でユース部門のコーディネーターを務めるベルナルド・ロメオによると、若手招集の目的は「A代表に同行してチームや試合の空気に慣れさせること」。7人は今回の招集で、U-20代表監督を務めるハビエル・マスチェラーノとも面会し、トレーニングを視察されることになっている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。