特筆に値する得点力を発揮。奥川雅也のパフォーマンスに迫る
2021-22のブンデスリーガでサプライズの1人となっている奥川雅也。シーズン途中の加入となった昨季は1ゴールにとどまっていたが、今季はすでに公式戦9ゴールをマークしビーレフェルトになくてはならない存在となっている。ブレイクを果たした25歳のアタッカーのプレーを、彼のスタッツも踏まえながら分析する。
ブンデスリーガ第23節終了時点で14位と、残留争いに奮戦中のビーレフェルト。チームはこれまでに22得点を挙げているが、その4割近い8ゴールをマークしているのが左SHに入る日本人プレーヤー、奥川雅也だ。
ゴール数にだけ目を向けると、リーグ戦における8ゴールという数字はセルティックで活躍する古橋享梧と並び、欧州1部でプレーする日本人選手として最多である。
奥川は19歳でオーストリアの名門ザルツブルクに加入。ローン移籍により複数クラブを渡り歩き、昨シーズン後半のローン期間を経て今シーズン、ビーレフェルトに完全移籍を果たした。
日本人としては珍しいキャリアを歩んでいる彼はJリーグでのプレー機会が少なかったこともあり、ゴールシーン以外(試合を通じて)のプレーを見たことがある人はそう多くなかったことだろう。
そんな奥川のプレースタイルについて、ビーレフェルトのチームとしての戦い方を踏まえて考察する。
ロングボール中心の戦術と頼れる相棒の存在
ビーレフェルトは平均ポゼッション率がリーグで最も低く、40%を切っている。ショートパスを繋ぐことはせず、早めにロングボールを蹴っていく。だが、このロングボールには長身CFヤンニ・セッラへと送り込む以外に意図された動きはない。このあたりがリーグで下から2番目の得点数となって表れている。
こうした空中戦による展開に対し、地上での攻撃は右SHのパトリック・ビマーが牽引役となっている。今シーズン3ゴール6アシストを記録している20歳のオーストリア人アタッカーはフィジカルコンタクトに強く、推進力に満ちた力強いドリブルでボールを前進させることができる。ボールを呼び込む動きも多く、ビーレフェルトの攻撃は彼の存在で回っていると言っても過言ではない。奥川の8ゴールのうち半分の4ゴールが彼のアシストによるものだ。
得点力に乏しい攻撃とはうって変わり、失点数はリーグで5番目に少ない29( 第23節終了時点)と見事な数字を誇る。[4-2-2-2]をベースとしてセンターサークルの先をプレス開始位置にブロックを形成し、相手のバックパスに合わせて全体を押し上げてプレスにはめる守備戦術は、フランク・クラマー監督に下部組織での指導経験があり奥川も在籍したザルツブルクの色を感じさせる、強度の高いものとなっている。
担う守備タスクとその評価
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Profile
とんとん
1993年生まれ、長野県在住。愛するクラブはボルシアMG。当時の監督ルシアン・ファブレのサッカーに魅了され戦術の奥深さの虜に。以降は海外の戦術文献を読み漁り知見を広げ、Twitter( @sabaku1132 )でアウトプット。最近開設した戦術分析ブログ~鳥の眼~では、ブンデスリーガや戦術的に強い特徴を持つチームを中心にマッチレビューや組織分析を行う、戦術分析ブロガー。