バイエルン就任1年目となる今季、順調に歩みを進めてきていたように見えたユリアン・ナーゲルスマンだったが、ここにきてチームに異変が起きている。リーグ戦、そして勝負の決勝ラウンドがスタートしたCLのいずれでもパフォーマンスが上がらず苦戦。若き名将が直面する課題とは?
「俺たちはワールドクラスのチームだ。でも、この姿勢はワールドクラスのメンタリティではない!」
ヨシュア・キミッヒがそう憤慨したのも当然だろう。2月12日、バイエルンは昇格組のボーフム相手にカウンターで翻弄され、4-2という屈辱的なスコアで敗れてしまった。
「今日が今季で最も悪い試合だったが、こういうことが起こったのはこれが初めてではない。グラッドバッハ相手にも敗れた(DFBポカールで5-0、リーグ戦で1-2)。バイエルンの美徳が失われている。本当にこれがバイエルンのメンタリティなのかを自問自答しなければならない!」
右ヒザの手術で守護神マヌエル・ノイアーが不在だったが、それが言い訳にならないくらい、酷いパフォーマンスだった。
ユリアン・ナーゲルスマン監督は急遽、選手の“幹部”であるノイアー、トーマス・ミュラー、ロベルト・レバンドフスキ、キミッヒを集めてミーティングを行った。『シュポルトビルト』誌によればナーゲルスマンは戦術のどこに問題があるかを中心選手に相談し、ポジティブな雰囲気の中で意見交換が行われたという。
しかし、想像以上に問題の根は深いのだろう。もはや1度の幹部会で解決できるレベルではなかった。
4日後に行われたCLラウンド第1レグのザルツブルク戦で、またしてもカウンターから先制を許してしまう。なんとか終了間際に1-1に追いついたが、昨年12月にバルセロナを3-0で圧倒したような「獰猛さ」はもはや見られない。
続く2月20日のグロイター・フュルト戦も前半につまずき、カウンターからFKを与えて先制を許してしまった。結局、後半に奮起して4-1で勝利したが、これほどパフォーマンスに波があってはCL優勝という目標はとても叶えられないだろう。
もともとナーゲルスマンは「ゲーゲンプレッシングをかけやすくするためにポゼッションをする」と言うほど、カウンター対策に力を入れている監督だ。にもかかわらず、ここに来て2部からの昇格組のカウンターにすら苦しむようになってしまった。まさに「ミニ・クライシス」(『ビルト』紙)である。
いったいバイエルンに何が起きているのだろう?
ナーゲルスマンの本音
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Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。