※2022年2月22日14時30分に記事タイトルを一部修正いたしました。
セリエAで、またも試合中のジャッジをめぐって関係者間の緊張が高まっている。
ゴール取り消しに監督も激昂
2月20日に行われた第25節フィオレンティーナvsアタランタでは、オフサイドで取り消しとなったアタランタのゴールが問題となった。62分、ジュゼッペ・ペッツェッラの左クロスをルフラン・マリノフスキーが合わせてシュート。しかしピッチでオフサイドの笛が吹かれ、VARシステムのビデオ・オペレーションルーム内での確認後にゴールの取り消しが決まった。
マリノフスキーはオフサイドラインの後方から飛び出しており問題はなかったが、同時に前線に飛び出したハンス・ハテブールの動きがオフサイドルールに接触するとみなされた。ボールには触っていなかったが、クロスが放たれた際オフサイドランより前に体が出ており、この動きがプレーに関与したと判断された。
サッカーの競技規則11条第2項では「オフサイドポジションから移動した、またはオフサイドポジションに立っていた競技者が相手競技者の進路上にいて相手競技者がボールに向かう動きを妨げた場合、それにより相手競技者がボールをプレーできるか、またはチャレンジできるかどうかに影響を与えていれば、オフサイドの反則となる」とある。
『コリエレ・デッロ・スポルト』は「ハテブールの動きがフィオレンティーナのDFを吊り出し、マリノフスキーへマークできないようにしたので、影響を与えたと判断された」と解説した。
だがアタランタ側はこの判定に猛反対した。ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督は激昂した末に退席を命じられた。クラブは試合後に抗議の意味で選手、スタッフ等の取材対応拒否を決定。一方で公式HPには取り消されたゴールシーンのスクリーンショットを掲載し、「皆さんで判断してください」とファンに呼びかけた。
多くの有識者が批判
このジャッジに対しては多くの批判も寄せられた。衛星テレビ『スカイ・スポーツ』で解説を務めたジャンカルロ・マロッキ氏は「私の見立てではゴールは正当。ハテブールはボールの軌道からは遠いところにいた。私がピッチにいたらガスペリーニ監督のように怒っているところだ」と語った。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「マリノフスキーはハテブールのマーカーではなく、他の選手がマークしていなければならなかった。従ってハテブールの動きがゴールに関与したと判断するのは強引だ」と論じた。
また、映像配信サービス『DAZN』でジャッジ解説を務める元審判のルカ・マレッリ氏は「二重のミスがある。ハテブールはゴールに影響を与えていないものだったし、主審の主体的な判断の場合はオンフィールドレビュー(主審によるリプレイの見直し)が課せられるはずなのに、それをしなかった」と指摘し、「ゴール取り消しとしたのはあまりに強引だ。同様のプレーはどう判断されるべきか、審判団は早急に再検討する必要があるのでは」と訴えた。
ローマvsエラス・ベローナ戦でも、試合中のジャッジに激昂したジョゼ・モウリーニョ監督が退席処分を命じられている。一方こういうムードに対してネット上では「ジャッジは受け入れるものだ。メディアが煽るのも良くない」という意見も出ている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。