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結実のシーズンへ。浦和レッズは本気でタイトルを獲りに行く

2022.02.17

DAZNとパートナーメディアで構成する「DAZN Jリーグ推進委員会」が2022シーズンの開幕を告げる特別企画。フットボリスタではライターの飯尾篤史氏に浦和レッズの2022シーズンを展望してもらった。

昨シーズンから始まっていた補強戦略

 今シーズン最初の公式戦で浦和レッズが放ったインパクトは絶大だった。
 
 2月12日の富士フイルムスーパーカップでJ1王者の川崎フロンターレに決定機を許さず、江坂任の2ゴールで2-0の完勝を飾ったのだ。

 川崎がチャナティップの起用ポジションを模索している最中だったのは確かだが、浦和も調整の遅れや負傷でキャスパー・ユンカーと小泉佳穂を欠いていた。

 それでも浦和は、就任2年目を迎えるリカルド・ロドリゲス監督の戦術が浸透していることを証明し、勝利やタイトルへの執着心と飢餓感を見せつけた。
 
 2022年シーズンは浦和にとって「3年計画の3年目」、J1制覇、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)優勝を狙う“結実のシーズン”である。

 大槻毅監督が指揮を執った20年シーズンは、長らく3バックでしか戦ってこなかったため、4バックにチャレンジするなど戦術をフラットにする作業を行った。

 21年シーズンは徳島ヴォルティスからリカルド・ロドリゲス監督を招聘し、本格的な改革に着手した。

 小泉や明本考浩といった指揮官のスタイルに合う選手をJ2のクラブから獲得。立ち位置で優位性を保ち、主導権を握ってゲームを進めるポジショナルプレーをチームに植え付け、J1リーグ6位、ルヴァンカップ4強、天皇杯優勝という成績を残した。
 
 こうして迎える勝負のシーズン。補強戦略はすでに半年以上前から始まっていた。

 「優勝を狙う2022年のチーム編成を2021年シーズンが終わってからやっているようでは遅い。だから、2021年夏にやってしまおうという考えで集中投下しました」
 
  そう語るのは、19年12月にテクニカルダイレクターに就任したクラブOBの西野努氏だ。5月31日にデンマークリーグMVPのDFアレクサンダー・シュルツを獲得したのを皮切りに、6月には現役日本代表のDF酒井宏樹と柏レイソルの10番MF江坂任、8月に水戸ホーリーホックの“心臓”だった平野佑一を迎え入れた。

 シーズン終了後に阿部勇樹が引退し、槙野智章、宇賀神友弥、興梠慎三、山中亮輔、汰木康也と、ベテランから中堅の選手が次々とチームを離れたが、改革には痛みがつきものだ。指揮官の戦術にマッチし、野心あふれる選手を獲得するには、メンバー刷新は必然だった。
 
 チームは今冬、スウェーデン代表MFダヴィド・モーベルグや鹿島アントラーズの守備リーダー犬飼智也、横浜FCの快速ウインガー松尾佑介、左右両サイドをこなすSBの馬渡和彰、大学ナンバー1ボランチの安居海渡など、12人の新戦力を獲得した。

 なかでも、新リーダーとして早くも存在感を発揮しているのが、MF岩尾憲だ。
 
 徳島時代にリカルド・ロドリゲス監督のもとで4年間プレーした岩尾には、指揮官も「私のサッカーのアイディアをすべて理解している選手」と絶大な信頼を置いている。スーパーカップではボランチの一角として先発し、攻撃のリズムやスピードをコントロールした。

 もっとも、岩尾の真骨頂はボールデッドの場面にうかがえた。両チームに負傷者が出て試合が中断した60分過ぎ、指揮官のもとに行き、戦術変更の提案をしたのだ。

 「前半は僕か柴戸(海)選手が(相手のアンカーのジョアン・)シミッチ選手のところに行くプレスが概ねハマっていたんですけど、後半、僕が谷口(彰悟)選手にプレスを掛けたとき、外を使われて横から内側にパスを入れられ、危ないシーンを作られた。だから、『この行き方は相手が修正してきているので、少し変えたほうがいいんじゃないか』という相談をしに行きました」

今オフ、徳島ヴォルティスから移籍した岩尾憲

 これこそ、岩尾が「ピッチ上の監督」「チームの頭脳」と言われるゆえんだろう。

 新戦力の加入によって変わってきたのが、チーム内の雰囲気である。「今のチームはパス&コントロールの質にこだわる選手が多い」と証言するのは小泉だ。絶対王者の川崎を超えるには、川崎以上に技術にこだわる集団でなければならない。西野TDが小泉の言葉を裏付ける。

 「ちょっとしたズレが大きなギャップになって、最終的には勝ち点差、順位の差になる。『まあいいか』で終えるのか、『これでいいのか?』と踏み込めるのか。だから『ドンマイ文化』をなくしたい。意識の高い選手が加入したおかげで、クオリティを追求するムードが生まれ始めています」

さらなる得点源の獲得

 リカルド・ロドリゲス監督は昨季終了後、「ベースの構築はだいたい終えることができた」と振り返った。

 スーパーカップの川崎戦で、ボランチが本職の伊藤敦樹が右サイドに入って複数のタスクをこなしたり、ボランチの柴戸がトップ下のように相手のアンカーにプレスを掛けたり、後半から4-5-1に変更したりと、相手や戦況に応じてフォーメーションやポジションを変えられたのは、ベースが築かれているからだろう。

 あとは、相手に対して最大限のダメージを与えられるかどうか。問われるのは、アタッキングサードの精度だ。

 出遅れているキャスパー・ユンカーや小泉が加わることで攻撃のバリエーションと精度は高まるに違いない。入国制限でまだ合流できていないものの、モーベルグは個人で局面を打開できるウインガーであり、ストライカーも務められる選手だ。

 さらに西野TDは「移籍市場はまだ開いているので、活動を続けます」と戦力の充実に余念がない。一部報道では、キプロス代表FWピエロス・ソティリオウ(PFCルドゴレツ・ラズグラト)やオーストリア代表FWトーマス・ゴイギンガー(LASKリンツ/残留報道もあり)の名前が挙がっている。彼らが本当のターゲットなのかどうかは分からないが、さらなる得点源の獲得に動いているのは確かだろう。

 こうしたフロントサイドの動きからも、タイトルへの執着心と飢餓感が十分に感じられる。 

 浦和は今シーズン、本気でタイトルを獲りに行く。しかし、たとえ優勝したとしても、それで終わりではない。浦和が思い描いているのは一過性の黄金期を築くことではなく、真の常勝軍団となることだ。

Photos: Getty Images

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Profile

飯尾 篤史

大学卒業後、編集プロダクションを経て、『週刊サッカーダイジェスト』の編集記者に。2012年からフリーランスに転身し、W杯やオリンピックをはじめ、国内外のサッカーシーンを中心に精力的な取材活動を続けている。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』などがある。

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