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リバプールファンから見たアフリカ頂上決戦。マネとサラーの、もう一つの偉大な物語

2022.02.13

1月9日から約1カ月、カメルーンを舞台に開催されたアフリカ・ネーションズカップ2021は2月6日、セネガル代表の初優勝で幕を閉じた。そのファイナルで両軍を牽引したのは、ともに1992年生まれの29歳、大会MVPに輝いたサディオ・マネと、惜しくも涙を呑んだがエジプト代表を決勝に導いたモハメド・サラーである。こうしてリバプールファンにとっても見逃せない一戦となった今回のアフリカ頂上決戦。その死闘120分+PK戦の攻防や2人のエースを取り巻くエピソードを、『リバプールFCラボ』で活動中のゆーりさんに伝えてもらった。

 セネガル代表が悲願の初優勝に王手をかけたPK戦5番手のキッカーはマネ。計り知れない重圧がかかる場面で、セネガルの10番は思い切りよく右足を振り抜き、ゴール左側へと蹴り込んだ。今大会を通して大当たりだったエジプト代表のモハメド・アブ・ガバル・ガバスキが方向は読んだものの、コースとスピードが完璧なキックはGKにとってはほぼノーチャンスでゴールネットに吸い込まれた。

 リバプールの偉大な二枚看板がエースナンバーを背負うセネガルとエジプト。これまでにクラブで数多くのタイトルを獲得してきたサディオ・マネとモハメド・サラーの両者が、自身のサッカーキャリアで最も重要なタイトルと位置づけたアフリカ・ネーションズカップ2021は、セネガルの初優勝という結末で幕を閉じた。

大死闘のファイナル

 セネガルはオーソドックスな[4-3-3]のフォーメーション。GKはチェルシーでも守護神を務めるエドゥアール・メンディ、最終ラインは右からブナ・サール(バイエルン)、カリドゥ・クリバリ(ナポリ)、アブドゥ・ディアロ(パリSG)、サリウ・シス(ナンシー)。中盤はナンパリス・メンディ(レスター)がアンカーでバランスを取り、イドリサ・グイェ(パリSG)とシェイク・クヤテ(クリスタルパレス)がインサイドハーフ(IH)に入る。イスマイラ・サール(ワトフォード)とマネの両翼に、CFはファマラ・ディエディウ(アランヤスポル)という3トップ。最後尾から前線まで欧州の第一線で活躍する大会屈指の豪華なラインナップとなった。

 一方のエジプトは老将カルロス・ケイロスが可変型システムを採用し、サラーの個の力を最大限に生かすことを狙う。GKは前出のガバスキ。このビッグセーバーは今大会で最も強い印象を残したサプライズ選手の一人であった。最終ラインは右からエマム・アシュール、モハメド・アブデルモネム、マハムド・ハムディ、アハメド・アブ・エル・フォトゥ。ここまでは全員がエジプト国内リーグでプレーする選手である。MFは中央にアーセナルのモハメド・エルネニーが構え、右にハムディ・ファティ、左にアムル・エル・ソリアというアル・アハリ所属の両選手。前線は右にサラー、左にオマル・マルムシュ(シュツットガルト)、中央がモスタファ・モハメド(ガラタサライ)という布陣だ。試合前の下馬評では両チームの戦力差は大きく、セネガルが優勝に近いと見られていた。

 ド派手なセレモニー後にキックオフを迎えた一戦は、序盤からセネガルが優位にゲームを進める。開始6分に左SBシスが絶妙なコントロールで左サイドを突破すると、対応を慌てた相手CBアブデルモネムが後方からスライディングを仕掛け、セネガルが PKを獲得した。キッカーはマネ。そしてこの場面では面白い光景が見られた。GKガバスキのもとに駆け寄り、マネのキック方向をアドバイスするサラー。するとマネもそこに加わり、その場で駆け引きを行ったのだ。試合後、エジプトの守護神はこのシーンの詳細をメディアに語っている。

 「『マネは右サイドにシュートを打つだろう』とサラーは言ってきた。『マネが近づいてきたのは僕の言っていることが真実だとわかっているからだ』と。するとマネは『僕は左にシュートを打つよ』と答えてきたんだ」

 それぞれの思惑が交錯したマネのキックは、サラーのアドバイスを受けたガバスキがビッグセーブ。ガバスキは完全にシュートの方向を読み切っていた。

 その後もセネガルは中盤を空洞化して後方からクリバリとディアロが高精度のフィードを送り、エジプトの最終ライン裏のスペースをI.サールやマネがシンプルに使う攻撃で主導権を握る。対するエジプトは攻撃時[4-4-2]、守備時[4-3-3]のシステムを敷き、コートジボワール(ラウンド16)、モロッコ(準々決勝)、カメルーン(準決勝)といった強敵との試合を通して徐々に練度を高めた守備組織で優勝候補の攻撃をはね返す。最前線のモハメドがN.メンディをマンマークで捕まえたこともあり、前半は互いにリスクを排除したロングボール中心の攻撃が多かった。

 セネガルはI.サールとマネのサイド突破から何度か惜しいチャンスを作ったが、得点には至らず。エジプトの攻撃はサラーの個人技に完全に依存した形で、サラーにボールが入ると複数人に囲まれる厳しい状況が続く。28 分にはセネガルの選手を3人、4人と次々にかわし、独力で決定機まで持っていったものの、シュートはGKの正面。前半終盤には対面の相手をオフ・ザ・ボールの駆け引きで出し抜き、フィニッシュまで至ったが、E.メンディのビッグセーブに阻まれた。複数人にマークされても単独で攻撃を完結し切るサラーの能力は凄まじいものがあった。

 後半も最初に主導権を握ったのはセネガル。前半からいくつかの修正を加えたアリウ・シセ監督のチームは、大外のI.サールとマネにボールが入ると、IHのグイェが相手のSBとCBの間のスペースを突いて深い位置まで侵入するようになる。また両SBもインナーラップを多用することで、ニアゾーンを使いたいという狙いが明確になっていた。さらにマネが中盤に顔を出す機会を増やし、そのエリアでオーバーロードを仕掛け、ライン間で間受けする回数が大幅に増加した。

 エジプトは徐々に選手間の距離が広げられ、後方からの縦パスで簡単にバイタルエリアまで侵入される展開が続くと、すぐにケイロス監督は動いた。59分、中盤と前線を3枚同時交代し、サラーを最前線に残すカウンター狙いの[4-4-1-1]にシステムを変更。守備ブロックのラインを数メートル後ろに下げ、スペースを埋めることを優先させるとともに、トレゼゲ(イスタンブール・バシャクシェヒル)の投入で陣地回復の時間を作ることも明確にした。

 エジプトはコートジボワール、モロッコ、カメルーンとの決勝トーナメント3試合すべてで後半の修正が見事に当たり、ケイロスの老獪な采配で勝ち抜いてきたチームである。そしてこの日も一定の成果を上げることに成功する。ここまで苦戦していたトランジションの機会を大幅に減らすことで、速い攻撃を好むセネガルが徐々に焦れていったのだ。3試合連続で120分を戦い抜いてきたエジプトは満身創痍の状態だったが、持ち味の運動量と強い精神力で足を止めることはなかった。両チームとも決定打がないまま、試合は延長戦に突入した。

セネガル対エジプトのハイライト動画

マネ「サラーと2人で優勝したかった」

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エジプト代表サディオ・マネセネガル代表モハメド・サラー

Profile

ゆーり

千葉県出身。都内の大学に通う現役大学生。幼少期の欧州選手権でフェルナンド・トーレスに魅了されたのがキッカケでリバプールを追いかけるように。アカデミー部門にも強い関心を持つ。NBAやF1など多趣味。LFCラボにも執筆中。

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