2月5日に行われたセリエA第24節の今季ミラノダービー第2ラウンドは、スクデット争い生き残りへ負けられないミランが、FWオリビエ・ジルーによる75分、78分の2ゴールで感動の逆転勝ち。これで勝ち点52(16勝4分4敗)とし、1試合消化が多いものの、同53(16勝5分2敗)の首位インテルに1ポイント差と食らいついた。災い転じて福もあるし、その逆もある、ダービーマッチの勝負の綾。西部謙司氏が振り返る。
一歩も引かないデュエルとインテルの先手
ご多分に漏れず、ダービーマッチは激しかった。そこかしこで過剰なぶつかり合い、さながらメンチを切り合うような互いに一歩も引かないデュエルが続く。
セリエA第24節、インテルとミランがそうなった理由はいくつもあるが、マッチアップががっちり嚙み合ってしまったのも大きな要因だろう。インテルは[3-5-2]、ミランは[4-2-3-1]。1対1のカップルが10組でき上がる。互いに逃げ場がない状況、ここで引いては男が廃る。とはいえ、何の工夫もなかったわけではない。
最初に仕掛けたのはインテルだった。長身ストライカーのジェコが、ひょいひょいとライン間に下りていく。ミランのボランチ、トナーリとベナセルが対面のバレッラ、チャルハノールを睨んでいる隙に、ジェコがその背後に下りてきてパスを受ける。これでインテルがつばぜり合いの先手を取った。
FWがライン間に下りてくるという種も仕掛けもない動きに対してミランが後手に回ったのは、相棒のラウタロ・マルティネスが前線にいるからだ。CBが2人のミランなので、1人がうっかりジェコを追いかけてしまえばラウタロにスペースを与えかねない。さらに、ジェコが引けばバレッラが入れ替わりに前進する気配を見せている。前門のバレッラ、後門のラウタロ。これでロマリョーリ、カルルの両CBとも動けなくなっている。
一方、ミランは自陣ビルドアップでのタイマン勝負を回避すべく、ゴールキックでGK含めて5人が横一線に並ぶ。何やら秘策ありげだったが、実はこれといった策はなかったのか、強靭な足腰を持つMFトナーリの前進と、左に張ったラファエル・レオンの内側を急襲スペースに定めた左SBテオ・エルナンデスのドリブルという真っ向勝負。おそらくアフリカ・ネーションズカップから帰ってきたケシエのトップ下起用で何かしたかったのだろうが、何も起きないまま時間は過ぎていった。
10分にインテルの右ウイングバック、ドゥムフリースがヘディングでゴールするがオフサイド。25分にはジェコ→ラウタロと繋いでバレッラのシュート。26分にはミランが頼りにしているトナーリからボールをぶんどって、またもジェコ→ラウタロでシュート。
28分、ラウタロのパスからドゥムフリースが抜け出して決定機となるが、GKメニャンがミラクルなセーブで防ぐ。この後も際どいシュートを止めまくったメニャンの市場価値はこの一戦でさらに上がったかもしれない。
しかし流れはすでにインテル。メニャンがラウタロの強烈なシュートを防いだのも束の間、CKからペリシッチが決めてインテルが流れからしてさもありなんの先制点を挙げた。
悪夢と至福が交差する4分間
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。