クラブレベルではバルセロナ・フェメニが快進撃を見せ、代表レベルでも2017年の女子EUROを制したオランダやプロリーグが盛り上がりを見せるイングランドが力をつけてくるなど勢力図が大きく塗り替わってきている欧州女子サッカー界。そんな流れを受け、2000年代にワールドカップ連覇を果たすなど一時代を築いたものの近年は勢いを失っているドイツの女子サッカー界でも変化の兆しが見られるという。その変化をもたらす、男子サッカー界から女子サッカー界へ移った指導者たちの言葉から女子サッカー進化の現状を読み解く。
バルセロナの女子チームが注目を集めていることを以前お伝えしたが、私の住むドイツの女子サッカー界では男子サッカー界から人材が流入するケースが増え始めている。
例えば、かつて元日本代表の永里優季らが所属したトゥアビーネ・ポツダムでは45年も指揮を執ったベルント・シュレーダーが2016年に退任して以降、いずれも男子サッカー界から転身してきた指導者を監督に据えている。
2016年から20年夏まで監督を務めたマティアス・ルドルフは旧東ドイツのポツダム近郊生まれで、主に3部や4部でプレーしながら教員免許を取得し引退後はSVバーベルスベルク(トップチームは現4部)のU-17で監督を務めた後、ポツダムのアシスタントコーチを経て監督に就任した。しかし2020年夏、兼業監督だったルドルフは教師の仕事を優先し退任。
専業監督を求めたポツダムが後任として白羽の矢を立てたのがソフィアン・シャヘドだ。シャヘドはヘルタ・ベルリンやハノーファーで選手としてプレーした経験を持ち、引退後はヘルタの下部組織で指導していた。ちょうど同時期、ヘルタがCSR活動の一環として経済面および技術面でポツダムへの支援を行うことを決定。ポツダムのトップチームがシャヘドの指導していたヘルタのU-15と練習試合をたびたび行っていたこともあり、各方面にとって理想的な契約となった。
今回はこの両監督、ルドルフとシャヘドの言葉から近年の欧州女子サッカーの傾向と男子サッカーとの違いを読み解く。
ドイツにおける男子と女子の違い
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Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。