イタリア国内での新型コロナウイルス感染再拡大に伴い、レガ・セリエAは1月8日、政府の要請に基づき第22節および第23節を、各会場5000人の観客収容を上限として開催することを決定した。
50%減→5000人上限へ
欧州の他の国々の例に漏れず、イタリアでは年明けから新型コロナウイルス感染症の陽性者が急拡大した。セリエAの各クラブでも、クリスマス休暇明けに感染者が激増。
クラスター感染を危惧した各地の地域保健所(ASL)は濃厚接触者の自主隔離や遠征の禁止などを厳格に指示し、その結果1月6日に行われた第20節ではアタランタvsトリノ、サレルニターナvsベネツィア、インテルvsボローニャ、フィオレンティーナvsウディネーゼの4試合が開催されなかった。なお棄権試合扱いとはならず、後日試合が組まれるものとされている。
この状況を鑑み、イタリア共和国のマリオ・ドラギ首相は伊サッカー連盟のガブリエレ・グラビーナ会長に対して直接電話を入れ、無観客試合の開催を要請。これに対しレガ・セリエAは1月8日にビデオ会議方式での緊急役員会を開催し、1月16日、23日に行われる第22節、23節の観客動員を各会場で5000人とすることに決定した。
感染の急拡大化の対策として先に観客数を一時的に50%減とすることを決めていたが、政府からの要請に対してさらに措置を変えることとなった。レガ・セリエAは公式声明の中で「これはサッカークラブが大きな責任感を持っていることを物語るものだ」と強調した。
振り回されるサッカー界
2年前のロックダウン後の再開の時には「興業優先か」との批判も受けたサッカー界だが、今回は同情の声も強い。
一般紙『コリエレ・デッラ・セーラ』は「スタンドのファンがマスクをしておらず、密集しゴール後に抱き合って喜ぶ様子がテレビに流れれば、ショックを受けるのも理解はする。だが、ではなぜクリスマス休暇でスタジアムが閉まっていた間に感染が急拡大したのか。その理由を学者やサッカーアンチの政党は明らかにすべきだ」と社説で訴えた。
一方サッカー界は、保健当局の決断にも振り回されていた。これまでは規約により陽性者が出たクラブにも一定の条件の下での練習が許可されていたが、各地のASLは一方的に自主隔離と活動の停止を指示。これを不服と考えたレガ・セリエAは行政裁判所に訴えを起こし、厳格な措置を課した4ケースのうち3つについて指示の撤回を勝ち得ている。
また、感染者の出たクラブの扱いについて地域保健所の間で基準が異なり、その結果クラブの間にも不公平感が出ているなどの声も上がり、レガ・セリエAは1月13日に会議を行って規約の見直しを図るという。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。