バイエルンでの挑戦をスタートして半年が経過したユリアン・ナーゲルスマン。ブンデスリーガ首位で前半戦を終え、CLグループステージではバルセロナを圧倒するなどして首位通過を決めた。自身がコロナ感染により不在だったDFBポカールではまさかの2回戦敗退を喫したものの選手のコロナ感染にも悩まされる中でまずまず順調な歩みを見せたように映るが、課題を指摘する声もある。チームビルディングの現状をレポートする。
ユリアン・ナーゲルスマンに、また新たな称号が加わった。
バイエルンが2位ドルトムントに勝ち点9差をつけて「秋の王者」になったことを受けて、『南ドイツ新聞』はこう称賛した。
「ナーゲルスマン率いるバイエルンは、歴史的とも言えるほどの攻撃的サッカーを展開した。そして同時に、彼は『危機コミュニケーター』(Krisenkommunikator)としても輝いた」
近年、これほどバイエルンがピッチ外で騒動に巻き込まれたシーズンはなかっただろう。ヨシュア・キミッヒら数選手が新型コロナワクチン接種を拒否し、国中から非難された。また、カタールW杯のスタジアム建設における人権問題が波及し、一部のファンがカタール航空のスポンサー契約打ち切りを要求。クラブがそれを拒否したため、年次総会は大混乱に陥った。
これらの危機において、オリバー・カーンCEOは当たり障りのないコメントしかできず、ファンの怒りに油を注いでしまった。クラブの顔としての役割を果たせず、株を下げたと言わざるを得ない。
それに対して株を上げたのがナーゲルスマンだった。難しい問題に対しても、逃げることなく、はっきりと自分の意見を口にしたからである。
ピッチ外でのスマートな対応
キミッヒのワクチン接種拒否について、ナーゲルスマンはこう訴えた。……
Profile
木崎 伸也
1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。