他の多くのリーグがクリスマス休暇に入る中、プレミアリーグは年末年始も絶賛営業中だ。中でも「ボクシング・デー」と呼ばれる12月26日は、英国フットボール界にとって特別な一日。家族と一緒にクリスマスを過ごした翌日にサッカー観戦を楽しむことが伝統となっている。
シティは記録的なゲームを演じる
今シーズンのボクシング・デーは、祝祭に相応しい派手なゲームが続いた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になった試合もあるが、6試合が開催されて計28ゴールが飛び交った。1試合平均4.67ゴール。とりわけマンチェスター・シティとレスターの一戦は6-3とド派手な打ち合いになり、1992年のプレミアリーグ創設以降で、ボクシング・デーにおける最多ゴール(9点)という記録的なゲームになった。
これでシティはプレミアリーグ最近8試合で28ゴールを叩き出して首位をキープしている。ちなみに同期間、下位に低迷するバーンリーは相次ぐ延期もあって3試合しか消化できておらず、一度もネットを揺らせていない。シティが28ゴールも稼いでいる間、バーンリーは無得点なのだ。
ちなみにシティは、レスター戦で6ゴールを奪うも後半に入って3失点を喫した。レスターのゴールを決めたアデモラ・ルックマンは今季ドイツのライプツィヒからローン加入中の選手。奇しくも、シティはそのライプツィヒとも今季、UEFAチャンピオンズリーグで対戦して6-3の勝利を収めている。英紙『The Times』によると、イングランドのトップリーグのクラブが、カップ戦を含めて1シーズンのうちに2度も6-3のスコアで勝利するのは、1934-35シーズンのウェストブロムミッチ以来のことだという。
さらに同紙によると、今季シティは頭文字が「L」から始まるチームとのホームゲームに強いそうで、「Leicester」と「Leipzig」に6-3で勝利したほか、「Leeds」にも7-0で快勝している。そうなると楽しみなのは来年4月の「Liverpool」との天王山だ!
ちなみにレスター戦ではPKから2得点したシティだが、2本ともレスターのMFユーリ・ティーレマンスのファウルによって獲得したもの。実はこのカードはPKとの縁が深く、昨シーズンの対戦ではレスターがシティの本拠地で5-2と勝利したが、その際にはティーレマンスがPKを決めるなどレスターはPKから3得点。1つのチームが1試合3本のPKを決めるのは、トップリーグでは63年ぶりの珍事だったという。
58年前は160ゴールが飛び交う
冒頭で説明したように、今年のボクシング・デーは1試合平均「4.67ゴール」という“ゴール祭り”になったが、上には上がいる。イングランド・トップリーグのボクシング・デーのゴール記録は58年前の1963年。その時は10試合が開催されて66ゴールが飛び交った。1試合平均「6.6ゴール」である。
英紙『The Guardian』いわく、その時の“ゴールショー”がボクシング・デー開催の人気を高めた要因の1つだという。大差がつく試合もあり、ウェストハムvsブラックバーンは2-8。今季はゴールの少ないバーンリーも、58年前のボクシング・デーは最終的に2位になるマンチェスター・ユナイテッドに6-1で大勝した。そして、フルアムに至っては10-1でイプスウィッチを一蹴。最下位で降格するイプスウィッチは、最終的にシーズン121失点を喫することになるのだった。
その1963年12月26日は、イングランドの4部リーグまで合わせると計160ゴールが飛び交い、実に7選手がハットトリックを達成したという。その時と比べると、どうしても今シーズンのボクシング・デーは物寂しく感じる。
プレミアリーグでは3試合が延期になり、イングランド2~4部リーグでは予定されていた33試合のうち24試合が延期となった。結局、今年のボクシング・デーに開催されたイングランドのリーグ戦は15試合だけ。これは1993年以降で最少だという。コロナ禍の収束が待ちわびられる。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。