フランスサッカーが快挙達成! 今季前半戦のUEFA指数でトップに立つ
クリスマス休暇に突入しているフランスサッカー界にうれしいニュースが舞い込んできた。2021-22シーズンの前半戦に稼いだUEFA指数が1位という、フランスサッカー史上前例のない快挙を達成したのだ。
全チームが生き残りに成功
今季、フランスからは6クラブが欧州カップ戦に出場している。昨季のリーグ王者リールと2位のパリ・サンジェルマンはUEFAチャンピオンズリーグ、予選3回戦から出場した昨季3位のモナコはプレーオフでシャフタールに延長戦の末に敗れたため本戦出場が叶わず、4位のリヨン、5位のマルセイユとともにUEFAヨーロッパリーグに参戦。そして6位のレンヌが、今季から始まったUEFAカンファレンスリーグだ。
CL勢では、グループAのPSGはマンチェスター・シティに次ぐ2位、リールはザルツブルグ、セビージャ、ボルフスブルクと同組だったグループGを首位で勝ち抜き、そろって決勝トーナメントに進出した。
EL勢は、グループAのリヨン、グループBのモナコともに無敗で決勝トーナメント進出決定。グループEのマルセイユだけ、ガラタサライとラツィオを追い越せずに脱落したが、2月にカンファレンスリーグの決勝トーナメント・プレーオフに参戦する。
そしてカンファレンスリーグでは、グループGのレンヌが、トッテナム戦が延期になったため1試合未消化ながら首位を確定。現時点で6クラブすべてが生き残っている。しかもPSGとマルセイユ以外は、グループ首位での勝ち抜けだ。
不振のクラブまで躍進
リールはリーグ1では前半戦8位、スポーツダイレクターのジュニーニョが退団するなどトラブル続きのリヨンに至っては13位と、国内では今ひとつ不振のクラブまでが欧州で好成績を残しているのは、国内のサッカーファンにとっても驚きの結果なのである。
3つのコンペティションを合わせて、フランス勢は計18勝(未消化のトッテナム戦にレンヌが勝てば19勝)で、これまでで最多の1万5417ポイントを獲得。イングランド(1万5143)、オランダ(1万4800)、イタリア(1万4667)、スペイン(1万2857)、ドイツ(1万2500)を抑えて前半戦のトップに立った(未消化のレンヌ戦でトッテナムが勝てばイングランドが上回る可能性あり)。
PSGがCLで一昨季に決勝進出、昨季はベスト4、ELでは酒井宏樹が在籍していた2017-18シーズンにマルセイユが決勝に進出した(アトレティコ・マドリーに0-3で敗戦)が、それ以外はPSGをのぞいて決勝トーナメント進出自体が珍しかったフランス勢にとって、今季はいったいどうしてしまったのか、というくらいの善戦だといえる。
対戦相手との巡り合わせなどもあるが、フランスリーグのレベルも向上しているのだろう。
PSGの存在がレベルアップに寄与
プロフットボール協会が発表したシーズン前半戦のスタッツでも、リーグ1の1試合平均得点数は「2.82」と、約40年ぶりに、1982-83シーズンの「2.87」に次ぐ高得点を記録し、ゴール数が劇的にアップしているという統計が出た。
これは個人的な印象だが、フランスリーグのレベルが向上したとして、そこにはPSGの存在が少なからず寄与している気がする。
フランス人選手では世界トップクラスのキリアン・ムバッペ、外国勢ではネイマールやマルコ・ベラッティ、マルキーニョス、ケイラー・ナバス、そして今季からはリオネル・メッシといった、CL常連チーム並のメンバーと国内リーグで対戦する機会を得ていることで、欧州戦への「慣れ」や「耐性」のようなものができているのではないかと。
パルク・デ・プランスでPSGと対戦する時の相手チームの戦いぶりも、ここ最近変わってきている。
カタールマネーで他クラブとはケタ違いのメンバーを集め始めた当初、パルクに来る相手チームはいずれも「負けても恥ではない。だって戦力が違いすぎるのだから」というスタンスだった。
ピッチ上での戦いぶりも「引き分けなら上等」のベタ引きだったし、試合後の会見でも、相手監督は「相手が強すぎる」と開き直っていた。
しかし近頃は、この“銀河系集団”の存在にも慣れてきたのか、逆に「当たって砕けろ」路線にスイッチしたかのように、オープンゲームで真っ向勝負を挑んでくるクラブが、下位勢でさえも多くなった。「一強」だったPSGは、他クラブにとって「ぶつかり稽古の相手」のような、格好のトレーニング材料にもなっているのだ。
ともあれ、一時はUEFAランキング6位転落も危ぶまれたフランスにとっては好ましい状況だ。
イングランド、スペイン、イタリア、ドイツの後ろにつけるフランスは、常に6位のポルトガルを警戒している。
フォーマットが新しくなる2024-25シーズンから、ランキング5位の国も、上位3チームまでがCLの本戦に直接出場できるようになるのは、4位のドイツに大差をつけられているフランスにとっては非常にありがたい改訂案で、それが決定する2023年夏までにポイントを着々と稼いで「5位の座を守る」というのが命題なのである。
そしてUEFA指数もさることながら、決勝トーナメントでどこまで進めるかはともかく、全6クラブがグループリーグを勝ち抜けたここまでですでに、欧州戦に弱かったフランスにとっては、一つの大きな成果だと言える。
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Profile
小川 由紀子
ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。