2020-21のリーガを制し、リーグ連覇を目指すもここまでパフォーマンスが上がらず苦戦を強いられているアトレティコ・マドリー。チームに何が起こっているのか、チームのメカニズムとシメオネが施した変化、そして12月12日に控えるマドリッドダービーの展望を、東大ア式蹴球部のテクニカルスタッフであるきのけい氏に分析してもらった。
ディエゴ・シメオネ監督のアトレティコ・マドリーと言えば「堅守速攻」というイメージが強いだろう。しかし、昨シーズンにルイス・スアレスという稀代のストライカーを獲得すると、シメオネはそれまでとは異なる攻撃的なスタイルをチームに落とし込み、2013-14シーズン以来となるラ・リーガ制覇を成し遂げた。
王者として臨んでいる今シーズンは、ここまで消化試合数にばらつきがあるとはいえ8勝5分2敗の勝ち点29で暫定4位、CLではグループステージ最終節に最下位から劇的に決勝ラウンド進出を決めるなど、昨シーズンとは打って変わって不安定な戦いが続く。その戦いぶりからも、守備面は言うまでもなく、帰還したかつてのエース、アントワーヌ・グリーズマンを含む新戦力の適応や選手の組み合わせ・配置という点でも、シメオネが試行錯誤していることがうかがえる。今シーズンここまでのシメオネ・アトレティコの戦術分析をもとに、ラ・リーガの優勝を占う一戦、マドリッドダービーを展望する。
積み重なる失点、そのワケ
初めに、アトレティコ・マドリーがそのアイデンティティとも言える堅守を発揮できていない要因として、以下の3つを挙げる。これらを1つずつ説明していく。……
Profile
きのけい
本名は木下慶悟。2000年生まれ、埼玉県さいたま市出身。東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻所属。3シーズンア式蹴球部(サッカー部)のテクニカルスタッフを務め、2023シーズンにエリース東京FCのテクニカルコーチに就任。大学院でのサッカーをテーマにした研究活動やコーチ業の傍ら、趣味でレアル・マドリーの分析を発信している。プレーヤー時代のポジションはCBで、好きな選手はセルヒオ・ラモス。Twitter: @keigo_ashiki