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バルセロナを待ち受ける大勝負――エスパイ・バルサは実現するのか

2021.12.08

 12月、バルセロナを財政上の2つの大勝負が待ち構えている。

 1つは、UEFAチャンピオンズリーグ第6節のバイエルン戦(11月8日)。アウェイでバイエルンに勝てばグループステージを突破できるが、勝てなければベンフィカの結果次第となる。

 グループステージ敗退となれば、ベスト8進出が前提の上で計上している予算から約2000万ユーロ(約25億6000万円)の減収となり、2021-22シーズンの決算は500万ユーロの黒字から1500万ユーロの赤字へ転落する。たとえUEFAヨーロッパリーグで優勝しても、黒字が出るか出ないかギリギリというところだ。

ソシオ全員が是非を問う

 2つ目は、巨大プロジェクト「エスパイ・バルサ」の是非を問うソシオの全員投票(12月19日)。エスパイ・バルサ(Espai Barça=直訳するとバルサ・スペース)は、カンプノウとバスケットボール場のリニューアルを柱として周囲の広大な土地を再開発するプロジェクトで、完成すればクラブとファンの聖地誕生となる。

 11月23日の総会でソシオの代表によってすでに可決されたプロジェクトだが、総予算15億ユーロ(約1920億円)の全額がローンで賄われるだけあって、代表者だけではなくソシオ全員の投票で最終決定されることになった。

 「エスパイ・バルサ」という名は、聞いたことがある人もいるかもしれない。2014年、前々会長であるサンドロ・ロセイによって発案され、ソシオ全員の投票により一度、可決されたものだからだ。

 当時6億ユーロの予算が組まれたが、引き継いだジョゼップ・マリア・バルトメウ前会長が実現できたのはヨハン・クライフスタジアム(Bチーム用のスタジアム)の建設だけ。会長に就任する前のジョアン・ラポルタはエスパイ・バルサの不透明な金の流れを攻撃していたが、プロジェクト自体は捨てず、2.5倍の予算で「イノベーション、テクノロジー、センシビリティ、持続可能性、アクセシビリティ」をうたう新プランを組み直した。

さらなる負債をソシオが許すか

 その中で最優先事項となるカンプノウの改修は2022年に着工され、2025年の完成時には収容10万5000人(現在9万9000人)の全席屋根付きスタジアムに生まれ変わる。

 途中、2023-24シーズンは代替スタジアム(以前エスパニョールのホームだったオリンピックスタジアムが想定されている)が使われる予定。カンプノウ以外のすべてのプロジェクトが終了するのは2027年中とされている。

 投票の争点は、昨季末時点で12億ユーロの負債があるところ、さらに15億ユーロもの負債を抱えることをソシオが許すかどうか。

 老朽化が進み、先日のCLベンフィカ戦では雨漏りもしたというカンプノウにリフォームが必要なのは間違いない。バスケットボール場もユーロリーグの基準をクリアするための拡充が求められている。

 だが、だからと言ってバルトメウ案の倍以上の支出が妥当なのかどうか? 財政危機下での未来への投資をするという難しい決断に、ラポルタの政治生命が懸かっている。


Photo: Getty Images

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Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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