セリエAでは、選手の故障多発が問題となっている。ミランDFシモン・ケアが12月1日のジェノア戦で左膝を激しく痛め、検査の結果、前十字靭帯及び側副靱帯の断裂が判明。今季絶望となった。
ナポリでは頭部を強打して頭蓋骨を数カ所損傷したFWビクター・オシムヘンに続き、DFカリドゥ・クリバリが左大腿部二頭筋の肉離れにより1カ月半の戦線離脱が確定。アタランタでは右大腿部二頭筋の肉離れにより約2カ月間に渡って戦線を離れていたDFロビン・ゴセンスが、11月30日のvsユベントス戦のアップ時に負傷箇所を再び痛め、さらなる戦線離脱が確定した。
満足に布陣が組めないチームも
『コリエレ・デッロ・スポルト』は、第15節終了の時点で、セリエAで故障による戦線離脱を余儀なくされている選手が63名に上ったと報じた。また、今季開幕から数えれば、のべ237名もの選手が故障を経験し、試合欠場数の累計は1053に及ぶという。
すでにピッチ上では複数のクラブで満足にフォーメーションが組めず、試合のパフォーマンスに影響が出ている。12月4日、ローマはインテルに前半で0-3と圧倒された後に敗北。試合後ジョゼ・モウリーニョ監督は「通常の状態でもインテルは我われより強いのに、故障も新型コロナウィルス感染も出場停止もあって人数を欠き、布陣には限界があった」と嘆いた。
また、主力の多くを故障で失ったナポリも、ホームでアタランタに敗れて首位から転落した。
各関係者が鳴らす警鐘
各サッカー関係者も、現状に強く警鐘を鳴らしている。ミランのステファノ・ピオーリ監督は「プレーをする者たちの健康が脅かされている。普段とは異なる状況(コロナ禍のこと)の中で日程を組むのが難しいことはわかるが、試合が多過ぎなのは明白だ。遠征から戻って来るのは朝の4時、そこから2日で次の試合に挑まなければならない」と厳しい事情を打ち明けた。
また、インテルのシモーネ・インザーギ監督は「日程をより良く注意して組む必要が出てきている。もう少し開幕を早めるか、国際Aマッチデーの日程を接近させるようより良い形で組み直して、リーグ戦を1週間だけでなく、まとめて休みを取らせるようにしないといけないのでは」と提言した。
かつてイタリア代表チームの専属ドクターを務めたエンリコ・カステラッチ教授は地元ラジオ局の取材に応え「FIFAにもUEFAにも、サッカー選手の健康と彼らにかかる負担を考慮する人間が誰もいないように思える。我われメディカルサイドには2、3カ月前から兆候が確認できたことだ」とサッカー界の構造を批判した。
最近では、民間のデータベース会社があらゆるカテゴリーのサッカー選手の故障経歴をデータベース化する働きも出てきている。選手たちの故障の管理はサッカー界を挙げての緊急課題として訴えられている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。