12月1日のプレミアリーグ第14節、グディソンパークで開催された今季マージーサイドダービー第1ラウンドは、アウェイチームが力の差を見せつける結果となった。現在3位のリバプールはこれで3戦連続4発大勝。対照的に14位のエバートンは3連敗&8戦未勝利(2分6敗)。地元ライバルの監督として古巣と再会したラファエル・ベニテスのチームに勝ち目はなかったのか。舞台裏のストーリーを含め、『リバプールFCラボ』で戦術班を担うトリコレッズさんがレポートする。
誰が呼んだか、「フレンドリーダービー」。2チームの本拠地があまりに近く、家族の中でも双方のサポーターがいる場合があるため、サポーター同士の仲が良いという意味で名づけられたそうだ。しかし、やはり「マージーサイドダービー」という方が聞き馴染みがあるだろう。そう、エバートンFC対リバプールFCだ。実際の試合はフレンドリーどころではなく、他のどの対戦よりも多数のレッドカードが提示されているという、荒れ試合上等の殴り合いである。しかも今回の一戦、特にサポーターを含めたリバプール関係者にとっては、いつにも増して特別な感情があったことだろう。
話は昨シーズン、20-21シーズンに遡る。2020年10月17日、エバートンの本拠グディソンパークで行われたダービーで、選手同士の接触によってフィルジル・ファン・ダイクとチアゴ・アルカンタラが負傷したのだ。特にファン・ダイクは右膝前十字靭帯を損傷し、EUROを含めたその後のシーズンを棒に振ることになった。リバプールのその後はご存知の通りで、呪われたかのようにCB陣に負傷離脱が続発。一時期はファビーニョとヘンダーソンがCBでコンビを組むという事態にまで発展した。結局、19-20シーズンに30年ぶりに取り戻したリーグタイトルを、わずか1年で手放す羽目になってしまった。
もちろんあの試合が逸冠の原因のすべてではないし、そもそもファン・ダイクとチアゴ以外の負傷に関してはエバートンは関係ない。だが、リバプールにとっては、昨シーズンの悪夢のきっかけとなった試合であることにも間違いがない。そんなわけで、今シーズンのダービー、特にグディソンでの試合は特別だったというわけだ。さらに言えば、エバートンを率いるのはかつての監督、ラファ・ベニテス。あの「イスタンブールの奇跡」をともに成し遂げた、いわばリバプールのレジェンドだ。その点についても、私を含めリバプールサポーターには複雑に思う人が少なくなかったことだろう。
様々な感情が渦巻く中で迎えた今回の一戦は、終わってみれば1-4。リバプールの完勝となった。そしてこの結果は、チーム戦術と選手個々、どちらにも大きな理由があるように思える。
中盤の攻防と構造
……
Profile
トリコレッズ
LFCラボライター・戦術班所属。2005年、「イスタンブールの奇跡」でリバプールファンに。少年サッカー時代にCBだったこともあり、CBの選手を偏愛している。Jリーグでは横浜F・マリノスのサポーター。