カタールW杯欧州予選グループCを1位通過することができず、プレーオフに回ることになったイタリア代表。スイス戦で1ゴール、北アイルランド戦ではスコアレスドローになるなど前線の得点力不足が指摘される中、新たな選手の招集の可能性が話題となっている。イタリア国籍を有しているカリアリのブラジル人FWジョアン・ペドロだ。
制度上は招集が可能
2010年8月にアトレチコ・ミネイロからパレルモに移籍。ポルトガル、パラグアイ、そして母国ブラジルなどを渡り歩いた後、2014年からカリアリに加入して活躍を続けている。公式戦にはセリエB、カップ戦を含めて246試合に出場し、81ゴールを記録。今季もすでに13試合で8ゴールを決めているカリアリの攻撃の柱は、2017年にイタリア人女性と結婚しイタリア国籍を有した。そしてU-17代表以外では母国ブラジルでの招集歴がないとされており、制度上はイタリア代表への招集が可能となる。
予選後、地元メディアの間では待望論が浮上。そして地元ラジオの取材に応えたカリアリのステファノ・カポズッカSDは、ジョアン・ペドロを強力に推薦した。
「ジョアンには『カリアリの残留と代表入りを目標に頑張ってくれ』と言った。FWが足りないというのなら、すでにイタリア人であるジョアン・ペドロのような選手をなぜ考慮に入れないのか」
本人も招集に前向き
ジョアン・ペドロ自身も興味を示している。11月21日のサッスオーロ戦後、地元メディアに対し「選ばれないかもしれないし、そういう話が出ていることだけでも名誉なこと」と控えめに語りながらも、「そうなったらうれしくないと言ったら嘘になる。歴史の中では強国の1つだし、私はブラジル人だけど家族は皆イタリア人だ。イタリアという国は自分を迎え入れ、いろいろなものを与えてくれた」と前向きな姿勢を見せた。
イタリア代表にとって、帰化選手の招集は初めてのことではない。ただ、正確には、ただちにジョアン・ペドロが招集可能な状態になっているわけではない。国籍を有すれば一方的に招集資格が発生するのではなく、国籍の切り替えと今後の代表招集の辞退申請を母国のサッカー協会に対して行う必要がある。
一方で、イタリアサッカー連盟(FIGC)の内部にも慎重論は存在する。ガブリエレ・グラビーナ会長は11月21日、パレルモで行われたイベントの席で「選手を呼ぶ権限はロベルト・マンチーニ監督とそのスタッフにあるし、新たな戦力が加わるなら大歓迎。ただ、監督とは、我われの国の育成組織で見出された若い選手を起用して価値を上げる、という基本方針を確認してある」と語った。
もっとも、ストライカー不足も現実的な問題で、”戦力補強”が必然とされる状況。『コリエレ・デッロ・スポルト』は「FIGCは手続きに動いており、ジョアン・ペドロが本当に1試合もブラジルA代表での出場経験がないかを調査している」と報じた。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。