10月17日、セリエA第8節のユベントスvsローマ戦で出されたPKの判定をめぐり、イタリアのサッカー関係者やメディアの間で数日に渡って議論が続いた。
アドバンテージ認められず
発端は同試合の41分。ユベントスのエリア内に飛び出したローマMFヘンリク・ムヒタリャンとユーベGKボイチェフ・シュチェスニーが交錯。ダニエレ・オルサート主審は即座にシュチェスニーのファウルと判定してPKを宣告したが、その直後にこぼれ球をタニー・エイブラハムが押し込み、ゴールが決まってしまう。
しかしゴールは認められずにPKが優先された。そしてジョルダン・ベレトゥのキックはシュチェスニーにセーブされ、結局試合は1-0でユベントスの勝利となった。
サッカーの競技規則第5条による「反則をされたチームがアドバンテージによって利益を受けそうな時はプレーを続けさせる」べきであるとされる状況だ。しかし民放テレビ局『メディアセット』によれば、ハーフタイムにローマのMFブライアン・クリスタンテが同様の疑問を持ってオルサート主審に質問したところ「GKも飛び出すし、オフサイドもPKもある。PKについてアドバンテージはない。PKが失敗したからといって、それを私のせいにするのかね?」などと返答したという。
試合後、ローマのジョゼ・モウリーニョ監督は「予備審判とも話したが、『PKではプレーは流さない』という返答があった。その時点で、議論するのは無駄だと思った」と話した。
当該審判には処分なし
その後、裁定に対し大きな批判が上がった。ローマの地元ラジオやSNSではオルサート主審に対して非難の嵐。イタリア審判協会(AIA)は「アドバンテージを出さなかったのはミスではない」などとして処分を避けたが、その結果さらに炎上することとなった。
10月19日付の『コリエレ・デッロ・スポルト』は「これでリーグ戦は欺かれた」との見出しを掲げて猛批判。一方で『メッサッジェーロ』紙は、審判選定委員長のジャンルカ・ロッキ氏が「危険なファウルなどがなされない限り、アドバンテージは常に出されるべきである」との意見を示したとして「ローマの選手に違う説明をしたことも、AIAの信頼を失う行為だとして快く思わなかった」と報じた。
しかし、結局オルサート審判に対する処分などは発表されず、第9節でも外されないままアタランタvsウディネーゼ戦のVAR担当審判に選定された。地元紙によれば、ローマもクラブとして正式な抗議を検討したものの、非公式に懸念を表明する程度で収めることにしたという。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。