ポルトと0-0で引き分け、ミランに1-2で勝利して1勝1分のアトレティコ・マドリーに対し、双方から白星を挙げたリバプール。21-22シーズンのCLグループB第3節で実現した両軍の1年半ぶりとなる対決は、エスタディオ・メトロポリターノでアウェイチームが2-3で競り勝ち、3連勝で16強進出に王手をかけた。アトレティコを率いて11季目となる51歳のアルゼンチン人と、リバプールで7季目を迎えた54歳のドイツ人。明らかに考え方が違う、どこかチグハグな2人の名将の再戦を、西部謙司氏が振り返る。
リバプールのスタートダッシュ
アトレティコ・マドリーとリバプールの対戦は、19-20シーズンのCLラウンド16以来だった。その時はアトレティコが2勝(1-0/2-3)している。
「あれだけのメンバーがいるのに、ああしたプレーをする理由が私にはわからない」
ユルゲン・クロップ監督は試合後にそう話していた。今回の対戦前にそのことを聞かれると、こうコメントしている。
「憤りと失望で口にしたが、彼らは全員で素晴らしくよく守っていた。敬意を表すしかない。私が好きかどうかといえば好きではないが、彼らはそれで多くの成功をつかんできた」
ディエゴ・シメオネ監督のプレースタイルは相変わらず好きではないようだが、角が立つような言い方はしていない。クロップはジョゼップ・グアルディオラ監督が率いた全盛期のバルセロナを「退屈」と評した男なのだ。好みははっきりしている。それを言うべきかどうかはともかくとして。
もちろん、クロップがアトレティコのスタイルを気に入ってくれているかどうかなど、シメオネにとっては知ったことではない。また、この手の批判もうんざりするほど聞かされてきただろう。人の生き方もクラブのやり方もそれぞれだ。クロップも今回は敬意を忘れなかった。ただ、この2人の考え方が違うのは明らかである。
シメオネはただ生き抜くために全力を尽くし、クロップは生きている実感を求める。似ているようで接点を持っていない。
前回のアトレティコがクロップにとって「理解できない」なら、やはり今回も理解できなかったに違いない。ホームのアトレティコは[5-3-2]で深く守っていた。……
Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。