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ハフィーニャ、鮮烈なセレソンデビュー。ネイマール依存を軽減できるか

2021.10.21

 国内のメディアとサポーターを大いに盛り上がらせる、ブラジル代表の新人が現れた。24歳のFWハフィーニャ(リーズ)だ。

デビュー戦から活躍

 ドリブル。フェイント。ワンツー。味方を生かす。相手のファウルを誘う。自らシュートもする。さらに「彼の存在によって、ブラジルは縦への動きとスピーディーでダイナミックな攻撃が増えた」「チームはボールを奪われても素早く奪い返し、30秒かからずにフィニッシュまで持ち込んでいる」

 2022年W杯南米予選第12節ブラジルvsウルグアイ戦での4-1の勝利の後、ブラジルの報道を飾った、ハフィーニャのプレーと彼が生み出したチームへの効果を絶賛する言葉の数々だ。

 ハフィーニャは2021年9月のFIFA国際Aマッチデーで初招集されたものの、イギリスのパンデミック水際対策の影響でクラブから代表への派遣が許可されず、今回の3連戦で代表初合流を果たした。

9月シリーズでは代表派遣の許可が下りず、今回が初の代表合流となった Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

 デビュー戦は、ブラジルがアウェイで3-1の勝利を収めた10月7日のベネズエラ戦。ネイマール(パリ・サンジェルマン)を出場停止で欠く中、0-1のビハインドで迎えた後半から出場し、主に右サイドでチャンスを作り始めた。

 66分には、ハフィーニャが蹴ったCKをマルキーニョス(PSG)がヘッドで決めて同点に。84分のガビゴウ(フラメンゴ)のPKでのゴールでは、ビニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)との連携で、そのPKに結びつく攻撃を展開。さらにアディショナルタイムには、同じくフル代表デビューを飾ったアントニー(アヤックス)のゴールをアシストした。

ベネズエラ戦ではアントニー(手前)のゴールをアシスト(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

 試合後、ハフィーニャに自分のプレーについて聞くと、「多くの意味を持つものになった。アシストはゴールと同じ価値があると信じているし、ゴールを決めるのと同じぐらい幸せに思う」と、鮮烈なデビューの後にもかかわらず冷静だった。

ネイマールと比較

 2試合目のコロンビア戦(10月10日)では、60分から途中出場。試合は0-0で終わり、ブラジルは南米予選で初めて勝利を逃したものの、彼のプレーは大いに称えられた。

 そして、3試合目のウルグアイ戦(10月14日)では、ついに初スタメン。ブラジルが4-1で勝利を収め、ハフィーニャは2ゴールを決めた。

 ハフィーニャは、やはり高揚感を内に秘めた表情で語った。

 「説明できないほど幸せだ。ゴールと勝利で、これ以上ない初スタメンになったし、子供の頃からの夢が叶った」

 ネイマールとの相乗効果も注目された。特にウルグアイ戦、ネイマールが決めたチーム1点目では、ハフィーニャからのボールをフレッジ(マンチェスター・ユナイテッド)が繋いでネイマールに出している。さらに、ハフィーニャの1点目は、ネイマールのシュートがGKに弾かれたところに走り込んで決めたもので、2点目はネイマールのアシストによるゴールだった。

 「ネイと一緒にプレーするのはすごく簡単なんだ。彼から、そして対戦相手に前掛かりで攻めていく彼のプレースタイルから、たくさんのインスピレーションをもらえる」

 そう語るハフィーニャの1点目の後、印象的な場面があった。歓喜とともにみんなで抱き合い、踊った後、ネイマールはハフィーニャと肩を組んでプレーに戻りながら、若い相棒の頭をそっとなでていたのだ。

代表初ゴールを決めた後、ネイマールがハフィーニャの頭をそっとなでた(Photo: Lucas Figueiredo/CBF)

 ブラジルのスポーツ情報サイト『グローボ・エスポルチ・ドットコム』があるデータを掲載していた。

 この2022年W杯南米予選で、ネイマールは8試合780分間に出場し、7ゴール(得点ランキング2位)7アシスト(アシストランキングトップ)。出場時間の56分に1回、ゴールかアシストをしている計算になる。

 一方、ハフィーニャは3試合157分間出場で、2ゴール2アシスト。出場時間の39分に1回、ゴールかアシストを記録している。その他のデータも含めてハフィーニャの効率の良い貢献を称え、チームのネイマール依存を軽減する存在になる可能性を語っている。

「“発見”じゃない」

 19歳でヨーロッパに渡り、ポルトガルのビトーリア・ギラマエンスとスポルティング、フランスのレンヌで経験を積んだ彼は、2020年にリーズに移籍。この夏の移籍市場でも、リバプールをはじめ、いくつかのビッグクラブから打診があったと報じられた。

 ただ、ブラジルではプロとしてプレーしていないことから、国内ではあまり馴染みがなかったため、「チッチの発見」という言葉が飛び交っている。

 キャプテンのチアーゴ・シウバは「“発見”じゃないよ。クラブで活躍を続けてきた、このチャンスを得るのに値する選手なんだ。そして、監督は彼の試合をずっと見続けている」と、若い選手が積み重ねてきた努力と実力を保証した。

 ブラジル代表チッチ監督は、3試合を終えた後の記者会見で、ハフィーニャがW杯出場枠争いに名乗りを上げたかを問われて「(リーズの)ビエルサ監督に感謝するよ」と、ユーモアを交えてハフィーニャを称えながら、彼に期待がかかり過ぎないよう、メディアやファンの盛り上がりに注意深くブレーキをかけている。

 「まずはクラブで非常に良いプレーをしなければ。競争相手は増えるし、それによってレベルも上がる。選手がブラジル代表であり続けるためには、競うことだ。公平な競争は良いものだよ」

 もちろんハフィーニャも、試合後の歓喜の中で、早くも気を引き締め直していた。

「今夜は眠れないだろうし、これからもこの試合を忘れることはない。この夜が終わらなきゃ良いのに、とも思う。でも、僕がここに来られた理由であるリーズでの良いプレーが引き続きできるように、また集中し直して頑張らなくてはいけない。これから何度でも代表に戻って来られるようにね」


Photos: Lucas Figueiredo/CBF, Getty Images

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チッチネイマールハフィーニャブラジル代表リーズ

Profile

藤原 清美

2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。

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