負ければW杯出場が大きく遠のく正念場となったオーストラリア戦。日本代表の森保一監督は[4-3-3]システムを採用し、守田英正と田中碧の二人を同時に先発させる決断を下した。Jリーグ最強チーム・川崎フロンターレで育った二人が見せたのは、まさにその当時から培ったエッセンスだった。
「相手を見て戦う」スタイル
「“フロンターレイズム”を注入した」と表現するのは大袈裟かもしれない。だが、川崎フロンターレで培われた思考をピッチにもたらしたのは紛れもなく事実だろう。
W杯出場に黄色信号が灯っていたオーストラリア戦。負けの許されない一戦で先発に抜擢されたのは、かつて等々力陸上競技場で中盤を制圧していた男たちだった。
田中碧と守田英正。
時にはポジションを争い、時には後輩の悩みを先輩が聞くなど、クラブで共に切磋琢磨してきた二人。これまでの最終予選で先発出場がなかったこともあり、この大一番での起用に燃えない理由はなかった。
「常に自分がやってやるという気持ちは持っていたし、こういう状況の試合で(先発に)選んでくれて『自分がやらなければいけない』という責任があった。素晴らしい先輩方がたくさんいる中で、選んでもらったからには勝たないといけなかった」(田中)
「前回の活動からスタートで出られない悔しさがあった。サウジアラビア戦もスタートから出られず、敗戦してしまったし、いち選手として悔しい思いがあった。だからこそ、今回は『何が何でも勝たせたい』という気持ちが大きかった」(守田)
大きな重圧のかかる試合。そんな中で、彼らがピッチで示したのは「止めて、蹴る」「相手を見て戦う」といったフロンターレで常日頃、意識してきたプレーだった。……
Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。