パンデミック宣言があった昨年3月以来、ずっと無観客試合が続いていたアルゼンチンの1部と2部リーグ。この10月からようやくサポーターの入場が許可される運びとなったが、有観客試合の復活早々から上限50%を上回る人数が入場していたケースが摘発されることとなってしまった。
データ読み込みのエラー?
キャパシティの50%を超える入場者があったと疑われているのは、1部リーグのべレス・サルスフィエルドvsインデペンディエンテ、ロサリオ・セントラルvsアルヘンティノス、リーベルプレートvsボカ・ジュニオール、そして2部リーグのベルグラーノvsリエストラ、CAサン・マルティンvsヒムナシア・デ・メンドーサの合計5試合。
アウェイチームのサポーターの入場は認められていないため、政府の観光・スポーツ省から記録の提示を求められたのはホームとなった5クラブだが、このうちベレスとリーベルに関しては、大型イベントを取り締まる検察庁が刑法205条(感染症の発生及び拡大防止措置に対する違反)に基づく司法調査に乗り出し、両クラブに証拠の提示を命じている。
記念すべき「サポーターの帰還」がボカとのスーペルクラシコという注目のカードとなったリーベルの場合、上限は3万6000人だったところ、検察側は75%にあたる5万4000人が入場したと推定。試合の映像や画像からは50%を超える数のサポーターでスタンドが埋められていたように見受けられるが、リーベルはあくまでも「クラブ側で記録されている入場者は3万6000人」と主張している。
ただ、「改札ゲートで入場者のデータ読み込みにエラーが生じた」ことから「混雑による事故を避けるため、キックオフ時間が間近に迫った段階で改札ゲートを開けた」との事実があったことを認めており、検察側は改札ゲートの回転バーの記録だけでなく、現場に設置されていたセキュリティ用カメラの録画を提出するように命令。これに従わない場合は罰金だけでなく、スタジアムの一部閉鎖処分もあり得ると警告している。
検問が機能不全のケースも?
ベレスの場合はインデペンディエンテ戦の2日後に観光・スポーツ省の代表団による調査を受けたが、セルヒオ・ラピサルダ会長は入場者数について「上限の1万6300人を超えていなかった」と断言。観光・スポーツ省からは「許可された入場者数を管理するための詳細確認があった」のみで「今後も感染拡大防止に全面的に協力し、徐々に入場者数を増やせるようにしたい」と語っており、クラブが処分の対象にはならないことを明らかにしている。
ちなみに、19カ月ぶりの有観客試合開催に際してはクラブ側の不手際だけが大きく封じられているものの、一部のメディアは主催者側にも問題があったことを指摘している。
スポーツ専門のデジタルメディア『Doble Amarilla』は、リーベルvsボカ戦に出向いた記者が実際に体験した話として、スタジアムに入るまでの3つの検問で、入場の条件とされているワクチン接種の証明となるアプリ「Cuidar」の提示を一度も求められなかった事実を報じている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。