9月30日、インテルは2020-21シーズンの決算報告を行い、約2億4560万ユーロの純損失を計上したと発表した。昨季よりも1億200万ユーロほどかさんだ数字となった。先日にユベントスが発表した2億900万ユーロを抜き、イタリアの地元紙各紙は「イタリアクラブとして歴代最多の赤字を計上した」と報じた。
多方面で生じた損失
昨季よりも1億4400万ユーロほど多い赤字について、クラブは声明の中で「新型コロナウイルス感染症のパンデミックによりイタリア国内や地球全体が社会的、経済的な影響を受けた結果、公衆衛生や産業活動を守るための必要な規制が敷かれ、その影響を1シーズンに渡って受けたため」と発表した。
具体的には無観客開催の実施で入場料収入などがゼロとなったことに加え、そのためにスポンサーが露出の低下で恩恵を受けられず契約の修正を強いられたこと、またアントニオ・コンテ前監督の辞任に伴う契約解除金の発生、そしてラジャ・ナインゴランやジョアン・マリオといった、当時インテルの契約下にあった選手の資産価値低下も発生したとされる。
アレッサンドロ・アントネッロCEOは経済紙『イル・ソーレ・24オーレ』のインタビューに対し「サン・シーロが無観客試合となったため収入が6000万ユーロも減り、スポンサー契約の修正によって5000万ユーロが減った。とりわけアジアや中国方面の企業の契約修正が影響した」と説明した。
一方、ロメル・ルカクとアシュラク・ハキミの売却分で発生した移籍金収入は、昨季の決算には反映されていない。
蘇寧グループの援助は望めない
今後、クラブの経営収支は改善に向かうと見られており、2021−22シーズンの決算での赤字額は1億ユーロ程度に減少する見込みだという。
アントネッリCEOは「インテルはこの2年間で給料、スクデットの報酬、そして7月、8月の報酬をすべて支払ってきた」と経営の健全性を強調し、「4億ユーロほどの債券収入が得られるよう、今年の11月に契約修正の話し合いがもたれる」と債券をベースにした資金調達計画の可能性についても言及した。しかしながら、選手の放出による移籍金収入の確保や人件費のコストカットなどは避けられない状況だと見られている。
オーナー企業の蘇寧グループは海外への投資を抑制しており、さらに経営破綻が危惧されている不動産大手の恒大集団に巨額の投資をしている影響もあって、資本増強などは望めない状態だ。
地元紙では「アジアからのスポンサー収入契約が修正されて価値の低下が発生しているが、今後のクラブ売却をにらんだものである可能性がある」などと将来の経営権譲渡の可能性について言及する報道もあった。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。