リバプールのアシスタントコーチによるプレッシング解説_後編
2019-20の『キッカー』誌に掲載された、ユルゲン・クロップの右腕ペーター・クラビーツによるプレッシング解説を紐解く本企画。後編となる今回は、ゲーゲンプレッシングに対する基本的な解釈とそれを機能させ続けるための工夫、さらにはこの戦術を成功させるうえでカギとなる“フロー”という概念について掘り下げていく。
ゲーゲンプレッシングの定義
そもそも、ゲーゲンプレッシングとは何だろうか? クラビーツは次のように説明する。
「ゲーゲンプレッシングとは、“ボールロストの瞬間に、プレーを止めずにすぐにボールを狩りに行く動き方”を言い換えたものです」
ボールロストした瞬間、プレーを止めずにトランジションのアクションをスムーズに行うことは現代サッカーの基盤となっている。とりわけ、トップレベルではこの部分で支障が出ると、マッチプランを組むこともままならない。そのため、クラビーツは次のように言う。
「この動きは、どの監督であっても実装したいものです。『お前のチームはボールロストに苦しんでいるのか? だったら、できるだけすぐにボールを奪い返せ!』というモットーの下にね。この間髪入れずにボールを奪い返すための動きをシステマティックにし、良くオーガナイズされたチーム全体の動きとして実行することがゲーゲンプレッシングと呼ばれるのです」……
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。