選手たちが真面目に議論。サッカーイングランド代表がフットサルに挑戦したら?
ベスト4が出そろい佳境を迎えたFIFAフットサル・ワールドカップだが、もしここに“フットボールの母国”が出場していたらどうだっただろうか?
サッカーと対極にあるフットサル代表
今夏のEURO 2020で決勝まで勝ち上がったイングランド代表は、来年のワールドカップ・カタール大会では優勝候補の一角に挙げられるだろう。そんなイングランドだが、フットサルに関してはさっぱりだ。
もちろんイングランドにもフットサルの代表チームはあるが、彼らは一度も主要国際大会に出場したことがない。今大会の欧州予選でも、予備予選こそ突破したが最終予選の一次リーグで全敗して無残に敗退。来年に開かれるフットサルEUROも、コロナ禍の影響で予選の途中に棄権しており、初出場の夢はお預けとなった。
男子サッカー代表がFIFAランクで3位まで浮上する中、フットサル代表は世界ランク60位。ソロモン諸島、タジキスタン、キューバよりも下にいる。もちろんイングランドにもフットサルのリーグはあり、今大会のW杯にはイングランドのクラブに所属する選手も1人だけ出場した。マンチェスター近郊のランカスター大学の学生で「マンチェスター・フットサル・クラブ」というチームに所属するリトアニア代表のGKだ。
そんなわけで、フットサルのイングランド代表にはあまり期待できないが、もしEURO2020で準優勝したサッカー代表が代わりに出場したらどうだろうか。サッカーとフットサルは「完全に別競技」と言われることが多く、いくら世界的なスター選手をそろえても全く歯が立たないと思うが、仮に出場するのならイングランド代表のファーストセット(5名)が誰になるのか気になるところだ。
実は、その答えはもう出ているのだ。イングランド・サッカー協会(FA)が選手たちに「5人制チームを選ぶなら?」というアンケートを行った動画がYouTubeチャンネルにアップされているので紹介しよう。
グリーリッシュが最多得票
まずはゴレイロ(GK)だが、いきなり問題が発生。「GKは要らないから……」と、ラヒーム・スターリングが独自の路線を進み始めたのである。「僕の場合は小さなゴールを置いてやるのが好きなので」と特別ルールを適用してGKを選ばなかった。するとルーク・ショーも同調し、デクラン・ライスも「GKなんて要らないよ」とGKを不採用。
ここで生真面目さを見せたのがDFタイロン・ミングスだ。「5人制はGKも必要なの?」とスタッフに確認。好きにしていいと言われると「好きにしろって、どういうことだよ」と困惑し、「GKを含めて5人なの?」と再確認していた。とはいえ、大半の選手は素直にイングランド代表の守護神ジョーダン・ピックフォードをゴレイロに選んでいた。
フィクソ(DF)で人気を集めたのは、1対1の守備に圧倒的な自信を持つ右SBのカイル・ウォーカーだ。「あのスピードは、誰も抜くことができないね」と大絶賛するチームメイトもいた。さらにEURO2020で中盤の舵取り役を務めたデクラン・ライスも人気だった。しかし、最終的に8票を集めて選ばれたのは、足元の技術に優れておりパスセンスもあるCBジョン・ストーンズだ。
激戦区のアラ(WG)に関しては、様々な意見が出た。フィル・フォーデンや“ラズ”ことラヒーム・スターリングを挙げる選手も多かったが、彼らに負けずとメイソン・マウントも人気銘柄だった。「めちゃくちゃ元気なので対戦したくない選手」とジャック・グリーリッシュもマウントに1票。ルーク・ショーも「あいつは『UEFAチャンピオンズリーグ優勝!』と自慢してくるのでチームに入れないとね」とチェルシーの欧州制覇に貢献したマウントをアラに置いた。
しかし、最終的にアラはジェイドン・サンチョとグリーリッシュの2名に決定。マウントも「“サンチーニョ”をトップ下に置くよ。テクニックを考えると彼は5人制サッカーのチャンピオンだろうね」と一目を置いた。
そして今回の企画で最多11票を集めたのが、EURO2020でも切り札的に起用されてチャンスを生み出したグリーリッシュ。「信じられないような足技で、狭い局面が得意」とハリー・ケインが絶賛すれば、「彼は絶対に外せない。怖い選手さ」とミングスも同意した。
全幅の信頼を得たキャプテン
最後はピヴォ(CF)だが、マーカス・ラッシュフォードを推す声も少なくなかった。カルヴィン・フィリップスなどは「最初の練習で3対3をやった時、サンチョ、ラッシュフォード、ジョーダン・ヘンダーソンのチームに完膚なきまでにやられたからね」とラッシュフォードの足技を評価した。
しかし、やはり大半の選手は最前線にキャプテンのケインを配置。「5人制、6人制、11人制でも関係ない。彼は必ずゴールを決める」とキーラン・トリッピアーはケインに全幅の信頼を寄せた。
そんな中、この企画に人一倍乗り気だったデクラン・ライスは「俺が選手兼監督を務めてすべてをこなす」と自分中心のチーム作り。そして「デックス・ライス・ライス・ベイビーズ」というチーム名まで用意していた!
最終的に選ばれたのは次の5名。ピックフォード、ストーンズ、サンチョ、グリーリッシュ、ケイン。
いくら世界の一流選手を集めてもフットサルのチームには絶対にかなわないと思っていたが、このメンバーならばもしかすると……?
Photos: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。