リバプールのアシスタントコーチによるプレッシング解説_前編
第5節を終えたプレミアリーグで首位タイにつけたリバプール。勝ち点99という記録的な数字で優勝した2019-20以来、2季ぶりの優勝へ向けて好スタートを切った。その2019-20の3月、ユルゲン・クロップの右腕を務めるペーター・クラビーツが、『キッカー』誌の中でプレッシングについて解説していた。世界トップレベルのプレッシングを誇るリバプールのコーチの言葉をもとに、彼らのプレッシングに対する解釈を読み解く前編。
プレッシングの定義・目的とは?
クラビーツは、プレッシングを次のように定義する。
「プレッシングとは、1つのコンセプトに従って能動的にボールを奪うための、目的を持った守備のアクション全般を指す」
さらに、その目的とはボールを保持する対戦相手から「“時間”、“空間”、そして“攻撃のオプション”の3つを、システマチックに奪い去る」ことだと続ける。
試合前にあらかじめ対戦相手の攻撃プロセスを分析し、戦い方を把握することで自分たちのプレッシングが機能するように準備する。
「つまり、プレッシングを行うチームは対戦相手の攻撃のアクションに影響を与えるために、自分たちの守備のアクションをオーガナイズします。対戦相手のアクションを誘導し、自分たちにとって予測可能なものにするのです」とクラビーツ。
厄介なのは、サッカーという競技では相手も対策を練ってくること。当然ながら、対戦相手も自分たちのプレッシングのプロセスを分析してくる。クラビーツによれば、試合前に準備した通りにプレッシングが機能することなどほとんどないという。
「試合前の準備の段階で、相手のプレッシングによって自分たちのコンビネーションプレーがうまくいかなくなることに前もって気づいたチームは対策を練ってきます。プレッシングが受けやすくなるポイントを極力減らしてくるのです」
とはいえ、その対策を練ってくるチームの戦い方にも法則性はある。プレッシング回避の基本は普遍的なものだからだ。……
Profile
鈴木 達朗
宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。