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ラ・リーガに起こった変化。短距離ダッシュが増えた3つの理由とは

2021.09.19

 「サッカーで重要なのは、長距離を走る力よりも短距離のダッシュを繰り返す能力だ」とよく言われる。だから、指導の現場からグラウンドを周回させるような練習は追放されつつあるわけだが、その言葉を裏付けるようなレポートをラ・リーガが発表した。

長距離よりも連続ダッシュ

 それによると、2015年から2019年にかけてラ・リーガ各クラブの総走行距離は1%減少。それに対し、時速21km~24kmのランの本数は2%増加したという。

 時速20km台というのは、いわゆるダッシュに相当する。長距離を走る能力よりもダッシュを繰り返す能力が重視されるスタイルに、ラ・リーガは変わろうとしているわけだ。個人的には、スタイルの変化をうんぬんするにはもっと長期的で継続的な調査が必要ではないかと思わないでもないが、このラ・リーガの結論を前提として話を進めていきたい。

 なぜ今、短距離ダッシュがより必要とされているのか? あるいは長く走ることが求められていないのか?

 レポートはいくつかの仮定をしている。

 第一の理由は、「ポゼッション志向の高まり」。ポジショナルプレーであれば、走るのはボールであって選手ではない。だから、長距離を走る能力は求められない。それはそうだ。逆に、なぜ短距離ダッシュが求められるのか? この点についてレポートには言及がなかったが、想像するにボールロスト後のプレスのせいではないか。ポゼッション志向は素早いボール奪取抜きには成立しないのだから。

 第二の理由は、「ハイライン志向の高まり」。ハイラインにすれば裏を狙おうとするアタッカーと、それを防ごうとするDFの双方にダッシュが要求される。だからダッシュ本数が増える――というのはその通りだろう。

 が、ここも私の想像力で補足すると、ハイラインであればあるほど、ボールロスト後の激しいプレスが必要になる(ボール保持者に前を向かれれば終わりだから)。「裏への走り合い」に、この「ロスト後の猛プレス」が合算されて、ダッシュ本数を増やしているとみる。

持久力より爆発力

 レポートが指摘する第三の理由は、「監督がそういう選手を求めるから」。これは鶏が先か卵が先かの論だろう。監督が求めるのはダッシュ力のある選手が活躍できる環境が整っているからだ、とも言えるし、逆にそういう選手が増えたことでダッシュ力が求められる環境が整った、とも言える。

 いずれにせよ、結論は1つ。

 ポゼッション志向が高まりハイライン志向が高まると、長く走れる持久力ではなく、短いダッシュを繰り返せる爆発力が選手に要求される、となる。ラ・リーガはそういう状態になっている。

 これ、他のリーグはどうなのだろう?

 「インテンシティの高いサッカーにはインテンシティの高い選手が必要」というのは当たり前の話だ。問題は、「インテンシティの高いサッカー=ポゼッション志向、ハイライン志向」と言い切っていいのか、という点。例えばチェルシーのスタイルはポゼッションを志向しないもののインテンシティは高い(ように見える)。おそらくダッシュ本数もかなりある(ように想像する)。

 「短距離ダッシュの本数」と「インテンシティの高さ」と「プレースタイル」の関係について、もっと緻密なレポートを読んでみたい。


Photo: Getty Images

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チェルシーリーガエスパニョーラ戦術

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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