主役ではなかった、だが不可欠。ミラン黄金期を支えた万能型のセードルフと特化型のガットゥーゾ
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2000年代、5シーズンの間に3度CL決勝進出を果たすなど、欧州の舞台で際立った成績を残し一時代を築いたミラン。カルロ・アンチェロッティ監督が率いた当時のチームにおいて真っ先に名前が挙がることこそ少ないものの、3度の決勝すべてで先発と決して外せない存在だったクラレンス・セードルフとジェンナーロ・ガットゥーゾ、2人の名バイプレーヤーにスポットライトを当てる。
ミランの栄光を支えた2人
クラレンス・セードルフは1976年生まれで、ジェンナーロ・ガットゥーゾは1978年。ほぼ同世代の2人は2度のCL優勝、2度のスクデット獲得などミランの何度目かの黄金時代を支えている。
カルロ・アンチェロッティ監督が率いた当時のミランのエースはブラジル人のカカーだ。プレーメイカーはアンドレア・ピルロ。チームの中枢にこの2人がいたが、セードルフとガットゥーゾは名バイプレーヤーとして不可欠な存在だった。
プレースタイルは対照的だ。16歳の時にアヤックスでデビューしたMFのセードルフは、アヤックスの育成組織が生み出した最高傑作と言われていた。抜群のテクニックと無尽蔵のスタミナ、天性のスピードにも恵まれ、頭脳明晰でゲームを読む力が10代の頃から定評ある早熟の天才児である。
ガットゥーゾは典型的なハードワーカーでタックルの名手。テクニックの方はセードルフとは比較にならないが、破格の運動量と猛烈な闘争心で「闘犬」と呼ばれた。
当時のミランは中盤をダイヤモンド型に構成した[4-4-2]、あるいはクリスマスツリーと称された[4-3-2-1]でプレーしていた。どちらも中盤底にはピルロが鎮座してゲームをコントーロールしていて、その左右にセードルフとガットゥーゾを並べていた。位置的には左右対称の同じポジションに、まったく異なるキャラクターを起用している。
セードルフはあらゆるポジションをこなせる万能選手だ。ピルロがいない時はアンカーポジションで代役を務めて遜色なし。カカーと2シャドーを担当することもあった。どのチームでも10番を要求する気位の高さ、圧倒的なサッカー知識、通算4回のCL優勝から「プレジデント」と呼ばれた。ピルロとカカーを繋ぐバイプレーヤーにしておくのはもったいないぐらいだが、フィールドに出しておけば何とかしてくれる安定感は抜群。カカーやピルロの調子が悪い、マークされて本来のプレーができないといった場合でも、セードルフがいれば大丈夫という安心感があった。
ガットゥーゾはピルロとのセットである。ディープ・ライイング・プレーメイカーとしてミランで新境地を拓いたピルロは守備ができない。後にはガットゥーゾ顔負けのボール奪取や献身的な守備力を身につけるが、当初は守備でまったくあてにならない選手だった。そこで、ガットゥーゾがピルロの用心棒として起用された。
仮に攻撃力10で守備力0の選手と、攻撃力0で守備力10の選手を組み合わせると平均は「5」だ。攻守ともに5の選手を組み合わせても平均値は同じになる。しかし、フィールドではそうではない。ピルロの技術とビジョンが圧倒的な効果を発揮し、ガットゥーゾのハードワークが相手の攻撃をことごとくキャンセルした。攻守の能力を足して2で割ることには意味がない。違う個性を組み合わせることで相乗効果を生む好例だった。
最高のバイプレーヤー
16歳でデビューし、19歳でCLチャンピオン。22歳で2度目のCL制覇。若くしてこれほどの成功を収めた例は稀だ。セードルフがプレーしていた時のアヤックスは世界最強のチームであり、サッカー史上でもベストチームの1つだった。さらに名門中の名門レアル・マドリー、インテル、ミランとトップクラブを渡り歩いた。
セードルフほど完成された選手もいないだろう。攻守万能、運動量抜群、戦術理解度は追随を許さず、スーパースターではないがスーパーな能力の持ち主なのは間違いなし。常にそのプレーは安定していた。
中でも特徴的だったのが、異常なまでに安定した体幹だ。大柄ではないが筋肉の塊のような肉体はバランスが崩れず、いつも背筋が伸びている。相当無理なプレーをしているのに、まったくもって簡単そうに見えてしまう。ヒザ下だけで蹴るシュートは信じられない速度で飛ぶ。
この身体能力に技術の高さが加わり、おまけに試合の流れを読む戦術眼も兼備。プレーが途切れた時に、タッチライン際で監督と“作戦会議”するセードルフの姿はどのチームでも見られたものだ。
アンチェロッティはミランをはじめ、ユベントス、レアル・マドリー、チェルシー、パリ・サンジェルマンなど名門クラブの監督を歴任しているが、バイプレーヤーの生かし方がいつもうまい。ビッグクラブにはエース級が1人や2人ではない。一方で、全員に希望通りのポジションと役割を与えるのはまず不可能だ。そこで本来のポジションではないが、チームを円滑に機能させるための役割が必要になってくる。例えば、ギャレス・ベイル、カリム・ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドのBBCがいたレアルでは、アンヘル・ディ・マリアをバイプレーヤーとして機能させた。主役級を名脇役に配してうまくまとめていた。
ミランにはルイ・コスタ、リバウドがいて、その後加入したカカーがスターになった。スペースさえ与えればドリブルでぶち抜いていく独特な能力を持つ。異能のブラジル人を前面に押し出す一方で、セードルフはスペースを作り出し、緩急を司り、攻守のバランスを取る。地味ながらバイプレーヤーとして絶大な力を発揮した。また、万能のセードルフには意外とこの役割がハマっていた。なぜかオランダ代表ではエゴを強く出していたが、ミランでのセードルフはチームを連結する名脇役を演じていた。主役を食うほどの力がありながら、目立ち過ぎず、少し余裕を持って、監督の視座でチームを支え続けていた。
ブレイブハート
主役級の脇役、特別出演感のあるセードルフとは対照的に、ガットゥーゾは根っからの脇役である。
父親はミランの伝説的ファンタジスタ、ジャンニ・リベラのようになってほしいと思っていたそうだが、息子は「昔からそんな選手に興味はなかった」とにべもない。ガットゥーゾのヒーローはサルバトーレ・バーニだったという。
バーニは闘志をむき出しにして走り回るハードワーカーだ。ナポリ時代はディエゴ・マラドーナを支えフェルナンド・デ・ナポリとともにMFとして活躍。1986年ワールドカップではイタリア代表の10番だったが、これは背番号だけの話だ。華麗なリベラのようなタイプには目もくれず、バーニに憧れていたというのはいかにもガットゥーゾらしい。
ペルージャでデビューすると、1シーズンでスコットランドのレンジャーズから移籍を持ちかけられグラスゴーへ。スコットランドは「自分の性格やスタイルに最も合っていた」と本人が語っているように、あり余るエネルギーを発散させて縦横に走り回り、レンジャーズのファンから「ブレイブハート」と呼ばれた。
1995年に封切られた映画『ブレイブハート』は、メル・ギブソンの監督主演。スコットランド独立のために戦ったウィリアム・ウォレスの生涯を描いている。手足を切られ、内臓をえぐられるという残酷な処刑を下されてもイングランドへの服従を拒否したウォレスと、最後まで徹底的に戦うガットゥーゾの姿にファンは重なるものを見たのかもしれない。
「彼がいたから、バランスの悪いシステムを採用できた」
アンチェロッティ監督が根っからの名脇役を見逃すはずがない。ピルロのアンカー起用という冒険のための保険がガットゥーゾだった。このコンビはそのままイタリア代表に転用され、2006年ワールドカップ優勝の原動力になっている。
面白いのは、この2人が少しずつ互いに似ていったことだ。水と油、対照的なプレーヤーだが、隣でプレーするうちにピルロは泥臭い守備もこなすようになり、ガットゥーゾは冷静なパスワークを見せるようになった。もちろん、ピルロとガットゥーゾが同じになったわけではないが、互いの影響を受けて少しずつプレーの幅を広げていった。これも正反対の組み合わせの隠れた効果と言えるかもしれない。
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フィジカル、スキル、インテリジェンスのすべてを高次元で兼備し、チーム内で必要とされる役割を完璧にこなしてみせたオールラウンダーのクラレンス・セードルフが、大人気スポーツ育成シミュレーションゲーム「プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド」(サカつくRTW)に登場!
そのセードルフ」を筆頭に、新バージョンの「フィリッポ・インザーギ」が新★5選手として登場する“LEGEND SCOUT”に加え、★4のセードルフ、インザーギ両選手が手に入るログインボーナスも実施中だ。さらに、ミッション達成で東京ヴェルディのユニフォームやエンブレムといったコラボアイテムや★5「柱谷哲二」などコラボ選手が獲得できる“東京ヴェルディ コラボキャンペーン”も同時開催!
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<商品情報>
商品名 :プロサッカークラブをつくろう!ロード・トゥ・ワールド
ジャンル:スポーツ育成シミュレーションゲーム
配信機種:iOS / Android
価 格 :基本無料(一部アイテム課金あり)
メーカー:セガゲームス
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。