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リーグ1開幕から快進撃を見せるニース。5つのポイントに注目すべし

2021.09.14

 第5節までを消化したリーグ1は、予想通りパリ・サンジェルマンが首位をひた走っている。今季は彼らの優勝でほぼ決まりだろう。

 ……と、タイトルレースの楽しみは薄いのだが、その中から「おっ?」という注目選手やチームが出てくるのが、このリーグの面白さでもある。

 その1つが、現在4試合を終えて4位につけているニースだ。

 他クラブより消化試合が1つ少ないのは、第3節マルセイユ戦でサポーターが相手選手にペットボトルを投げつけるなど、暴動に発展して没収試合となったため。75分まで1-0でニースがリードしていたこの試合は後日あらためて行われることになり、自軍のサポーターが暴行を働いたニースには、勝ち点2(うち1点は執行猶予付き)を剥奪という制裁が下された。

好守ともに安定感抜群

 さて、ここまでの彼らは、4試合を終えて3勝1分と無敗をキープ。さらには10得点0失点と、全試合でクリーンシートである。前述のマルセイユ戦も、あのまま試合終了を迎えていたら1-0で勝利していた可能性もあった。

 守備だけでなく攻撃も活発だ。開幕戦のスタッド・ランス戦こそ0-0と無得点でのスタートだったが、次のリール戦は昨年のリーグ王者から4点をむしり取り、第4節ボルドー戦でも再び4点をゲットした。

 ここでは、そんな今季躍進が期待されるニースに関して、注目したい5つのポイントをピックアップした。

1、指揮官は昨年の優勝監督
 今季からニースを率いるのは、昨シーズン、リールを優勝に導いたクリストフ・ゴルティエだ。

 さっそく古巣を4-0で叩きのめすとは容赦ないが、彼は着任以降、得意とする[4-4-2]のシステムを採用し、リールで実現したような守備と攻撃のバランスが取れた魅力的なオフェンシブサッカーを追求している。

 現在55歳の彼が正監督としてのキャリアをスタートしたのは2009-10シーズンからで、それまではリヨンやマルセイユなどのビッグクラブでアシスタントを務め、短期間ながらギリシャやUAE、イングランドなど、国外リーグも経験している。

 8年間率いたサンテティエンヌ、その後のリールとも、降格スレスレという瀕死の状態で迎えられ、その後チームを上位常連まで引き上げた。カリスマ性のある彼は、若手が多く、元気いっぱいなニースのカラーにも合っている。

2、充実の夏のメルカート
 この夏は4800万ユーロと、PSG、レンヌ、マルセイユに次ぐ資金を投入した。中でも目玉補強は、1500万ユーロでAZから獲得したオランダの若きウィンガー、ケルビン・ステングスだ。

 若い頃から将来性を高く評価され、18歳でプロデビューした後、さあいよいよブレイクか、と期待された2017-18シーズンの開幕戦で右膝の前十字靱帯断裂という大ケガを負い、翌シーズン11月まで欠場するという辛い体験をした。

 しかしその後はエールディビジで着々と経験を積んだ。新天地での挑戦は、ポテンシャルを発揮する格好のチャンスと捉えていることだろう。

AZから獲得した期待のウィンガー、ケルビン・ステンクス(中央)

 そしてもう1人、モンペリエからFWアンディ・デュローを1000万ユーロで獲得した。

 モンペリエでの3シーズンでも毎年2桁得点と安定した得点が見込め、昨季も15得点10アシスト。決め手にも作り手にもなれて、ヘディングや突発的なロングボレーなどいろいろな手札を切り出してくる彼は、フランス国内ではかなり評価の高いストライカーだ。さっそく2ゴール2アシストと、本領を発揮してくれている。

3、守備を司る古参の南米勢
 昨シーズン加入組が大半と在籍歴が浅い選手が中心のニースで、今季6シーズン目の古株がアルゼンチン人GKワルテル・ベニテスと、CBの元ブラジル代表ダンテの守備コンビだ。

 ダンテが加入してから、ニースの印象は大きく変わった。

 彼の絶大なリーダーシップとガッツがチームに浸透し、骨太で猛々しいスピリッツを感じる集団になった。来月で38歳になる彼のバックラインでの存在感があってこそ、前線の若い攻撃手が思い切りよく暴れられる。

 そして、正GKに昇格して4季目のベニテスは、その初年度だった2018-19シーズン、PSGと並んでリーグでも2番目に少ない35失点と、実力を示してみせた。28歳と成熟期にある彼も、現チームの最古参メンバーとしてチームに安定感をもたらす要素の1つだ。

4、ヤングガンズ
 チームの主力を占めるのは20代前半の若手。ここで注目を浴びてさらにステップアップしたい、という野心に溢れている彼らは、やる気がみなぎっている。

 同年代同士での切磋琢磨もあり、学ぶ意欲も旺盛だ。そしてその彼らのエネルギーが、そのままチームの勢いになっている。

 ちなみに、その中にはレジェンド級プレーヤーの二世が2人いる。

 リリアン・テュラムの次男ケフレン(20)と、パトリック・クライファートの次男ユースティン(22)だ。ケフレンは守備的MF、ユースティンはウィンガーで、それぞれモナコ、アヤックスと、育成に定評があるアカデミーで仕込まれた。2人ともすでに1ゴールと、ニースの快打線の一端を担っている。

ローマが保有権を持ち、昨季はRBライプツィヒでプレーしたユースティン・クライファート

5、注目の若きストライカー
 今季ここまですでに4得点1アシスト。今後ビッグクラブに羽ばたくこと間違いなしと注目を集めているのが、ストライカーのアミーヌ・グイリ(21)だ。リヨンで育成を受け、フランス代表でも全世代で代表に選ばれている選手だ。

 リヨン近郊出身の彼は、子供の頃からとにかく得点力が高く、1試合で10点を決めることもザラだったという。相手チームの監督から「同じ年齢でない子供も混ざっているだろう?」と疑われて証明書を見せると、たしかに同学年ではないが1つ下だった、というエピソードもある。

 常に飛び級で育成を受けていた彼は、“ミニ・ベンゼマ”と呼ばれていた。

 しかし、憧れのリヨンでいよいよプロキャリアをスタートかと期待された2018-19シーズン8月に、練習で左膝の靱帯を断裂し、長期間、戦列から離脱することに。前述のケルビン・ステングスと似たような境遇を体験したわけだが、結果的にリヨンに残れず、昨シーズン、ニースに移籍した。

 しかし、子供の頃から当然のようにスタメンで、常に自分がゴールゲッターとして注目を浴びてきた彼にとって、この挫折は人間的に成長する上でも非常にいい経験となったと、身近で支えてきた兄はコメントしている。

 本格的なプロ初年度となった昨季は、ニースで全コンペティション合わせて16得点8アシストという華々しい活躍を見せた。

 傑出しているのはスピードと足元のボールテクニック。得点力も高いが、トップスピードでゴール前まで運んだ後で味方にさばくアシストセンスも持ち合わせる。ベテランのデュローや、ステングス、クライファートら勢いのある若手たちと絡み、今季は昨年以上のパフォーマンスを披露してくれそうだ。

 クロード・プエル監督の時代に4位、ルシアン・ファーブル監督とともに3位というのが近年のニースのベスト順位だが、黄金期だった1950年代には4回の優勝を果たしている。

 ゴルティエ監督とともに、新たな黄金期を築けるか。


Photos: Getty Images

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ダンテニースパリ・サンジェルマンユースティン・クライファート

Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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